――アベル様と出会えたわたしは、なんて幸せなのだろう。
毎朝起きて、考えるのはアベル様の事。
これほど幸せに思える事は他にないと思う。


【アベルとレアのハロウィン】


恋愛ごとになんて興味がない。
この数年間、そう思って生きてきた。
本当は誰かが教団の実験施設から助けてくれるのを待っていた。
そして貴方はわたしの前に現れた。
「本当にインセストなのか?」
服を脱がされそうになったわたしを、貴方が助けてくれた。
それからわたしは貴方のために動く事が幸せになったの。
……でもそんな事、貴方には解りませんよね。


ハロウィンが近付いてきた頃、貴方は傷だらけで帰ってきました。
何があったのかと訊いても、返事はない。
わたしは心配になって訊きました。
「何があったのですか?」
それでも貴方は答えてくれません。
――悲しい。
インセストなんて言われても、貴方の力になれないなんて悲しくて悔しい。
貴方の思いを感じ取ろうとしても、貴方相手には無駄な事。
折角のハロウィンなのに貴方が辛い思いをするのはいや。
わたしは悲しい想いでジャック・オ・ランタンを作りました。


ハロウィン間近のある日、街でお菓子を配っていました。
わたしもまだ子供という事で貰いました。
なんでしょう、この気持ち。
義父と義母と暮らしていた時はワクワクしていたのに、わたしとアベル様が気まずくなってから気分が沈んでいくようです。
アベル様には一体何があったのでしょう。
わたしは落ち着かない気持ちでハロウィンまでの数日を過ごしていました。


そしてハロウィン当日。
アベル様は沢山の珍しいお菓子を私にくださいました。
トリック・オア・トリートと言ったわけではないです。
それなのになぜ?
アベル様はわたしに言いました。
「お前が元気ないから……」
わたしは思わず笑いました。
「なんで笑うんだ」
アベル様は少し苛立ちました。
だって。
「わたしはただハロウィンをアベル様と一緒に過ごしたかっただけです。お菓子が欲しかったわけではないんです」
するとアベル様は虚を疲れたように戸惑います。
「そうか、オレはてっきり……」
「貴方の中でわたしはどれだけお菓子が好きなんですか」
ハロウィンなんてただの行事でしかないのに、そこにこだわるアベル様が愛しく思えました。
大好きです、アベル様。









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2012年 10月31日 荘野りず

最初ハロウィンぽくないハロウィン2012。
レア視点は相変わらず難しい。
アベルはどこまでもツンデレ。



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