「リン君。これ受け取って!」
女子二人組みに呼び止められ、リンは店のロッカールームでチョコを渡された。
てっきり付き合ってとでも言われるかと思ったがそんな事はなかった。
「ありがとう。じゃあまた明日」
リンは礼を言うとさっさとアキラの待つアパートへ急いだ。


【バレンタインの教訓】


「という訳で、俺はこれだけ貰った」
リンは自慢げにチョコレートの山を数えた。
可愛らしくラッピングされたチョコが五つ。
「俺はこんなもんだな」
アキラも貰ったチョコレートを取り出した。
包みは三つ。
「今年のチョコ対決は俺の勝ちだね」
リンはVサインを作った。
自然に笑うリンはファッション誌の読者モデルと言われても納得してしまう。
以前はケイスケに女子と間違えられていたのに、本当にいい男になった。
同性であるアキラでさえそう思うのだから女性から見ればかなりモテるだろう。
実際リンはチョコレートを五つも貰っている。
「で、何が望みだ?」
バレンタイン前日、二人はお互い賭けをしたのだ。
自分の方が多くチョコを貰ったら言う事を聞いてもらう、という内容だ。
以前ミカサにいた時もアキラはチョコレートをよく貰っていた。
> リンもそうだという。
せっかくのイベントだ、菓子業界の陰謀がどうのよりもどちらが多く貰えるか競った方が楽しい。
二人の意見一致したので数で競う事になったのだ。
「そうだなあ……そうだ!俺アキラの手作りチョコ食べたい!」
「え?」
料理は一応出来ない事もないがチョコとなると微妙だ。
自信はないが、と前置きしてアキラはキッチンに立った。


「アキラ、無理しなくていいからね」
リンはそう言ってくれるが、せっかくのリンからのリクエストだ。
気合を入れて作りたい。
女性向けの雑誌を買ってきてバレンタイン特集に目を通した。
比較的簡単そうな生チョコを作る事にした。
「まずはチョコを刻んで……」
やけに太い塊がいくつも出来た。
それをボウルに移し、湯銭で溶かした。
「テンパリングは……」
リンはその様子を黙って見守っている。
「生クリームを……」
そして早二時間が経過した。
「できた!」
不恰好だが何とか形になった。
それをリンに見せると拍手した。
「おおー!アキラスゴーイ!さっそく食べよう」
リンは躊躇うことなく不恰好なチョコを口に入れる。
アキラも味見のつもりで食べてみる。
「う」
生クリームの量を間違えていたらしく、気持ち悪い食感だ。
平気で食べているリンは大丈夫なのだろうか。
「いけるって。俺の好みだよ」
どう見ても無理をして食べている。
それでも気を使ってくれるリンが愛しい。
「好きだ、リン」
「もちろん俺も」
その後やはり気分が悪くなったリンは女子から貰ったチョコを食べて口直しをした。
今日の教訓、無理なものは無理。







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2013年 2月13日 荘野りず

アキリンは二人とも基本的にスペック高そう。
自炊は出来るけどお菓子は作れないとかがいいです。
リンは女子に人気ありそうです。



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