「必ず追いかける」
リンとした約束を忘れた事などない、一度たりとも。


【星に願いを・10】


「……っ!」
アキラに切りつけられた太腿に鈍い痛みが走る。
日本刀の一撃だった。
「くそっ……!」
まだ切りあって間もない。
それなのに、こちらだけ息が上がっている。
それだけの実力差があるという事だろう。
悔しいが、これが現実だ。
どんなに頑張っても、目の前の兄には敵わない。
「それで終わりか?」
自身も手負いなのに余裕を見せるシキ。
それがいちいちカンに障る。
「ちっくしょう!」
リンは日本刀を力の限り振り回した。
シキは殺したいが、他のヤツには殺して欲しくないと思っている。
リンの青い瞳が揺れる。
今はこうでも、昔は憧れていた存在なのだ。
他のヤツらには殺らせたくない。
リンは力の入らない腿に力を入れる。
ふとシキのバランスが崩れた。
コロシアム爆発のときの傷だろう。
その瞬間を逃さずに、日本刀の切っ先を兄へと向ける。
どれほど憧れても届かなかった兄。
その瞳が今自分を見ている。
不思議と興奮した。
――どうしてもこいつだけは。
「シキ、お前だけは……俺の手で!」
シキも本当はそうして欲しいように思える。
日本刀を構えなおした。


それから約五年間。
リンは日興連への道が閉ざされていた。
「でも。アキラと約束しちゃったもんね」
リンは点滴を受けていた。
左側の腿の化膿が特に酷いと言われたからだ。
「アキラに会いたいな」
だが、その言葉も周りの人間に取り込まれた。


やっと入院生活が終わったと思ったら、左足に義足をつけるということになって、ますます遅くなってしまった。
リハビリも毎日きっちりと続けてやっと退院した。
日興連側に渡るために身分証も偽造した。
汚い事も平気でやった。
それくらいの覚悟がなければ混乱するニホンで生きてはいけなかった。
リンは何とか日興連に渡る事が出来た。
だがそれから現在の居場所を探すために虱潰しであたった。
それもかなりの時間がかかった。
それでもリンは諦めなかった。
Bl@sterから派生したらしいスポーツが日興連側で行われているのが解った時、アキラはそれを見に行っているのだろうと確信した。
――やはりいた。
再開したアキラはあまり身長も伸びていなかった。
いや、単に自分が大きくなっただけかもしれない。
二言三言話すと、トシマでの生活を思い出した。
苦労ばかりだったあの頃。
それに比べて現在は何と平和な事か。
リンはまだ持っていたカズイの写真を見た。
自分が甘かったゆえに死なせてしまった大切な人。
でも今は隣にアキラがいる。
アキラもまた大切な友を亡くした。
これからはアキラと共に思い出を作っていこう。
リンはシキの形見の日本刀をアキラに渡すと、昔のように抱きついた。
もうすぐ星が見える時間だ。
星にその願いを託して、リンとアキラは笑い合った。











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2012年 9月6日 荘野りず

長かった長編(?)の終わりです。
アキリンエンド。
ここまで読んでくださった方、有難うございました&お疲れ様でした!


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