横恋慕10のお題 トモリンで攻略

5、こっちを見て欲しい


敵対したチームをあっという間に殲滅。
 今回一番敵メンバーを倒したのはトモユキだった。


 溜まり場ではトモユキの活躍を祝って祝賀会が催されていた。
 最近入ってきた新人がトモユキの方をじっと見つめ、『尊敬』だの『敬愛』だのうそぶいている。
 「楽勝ー楽勝!俺らより強いチームなんていないんじゃね?」
トモユキは上機嫌で二本目の缶ビールを開けた。
 最初は一気に飲んで、それから強い酒に入るのがいつものトモユキだ。
それでも酒にはつまみが欠かせないように、こんな場所でも欠かせない人物はいる。
リンだ。
 「リンは?」
 「さあ?」
チームの仲間が気のない返事をする。
 仲間の中にはBl@sterに勝利する余韻を味わいたいという輩も多い。
こいつはそれなのだろう。
それ以上の答えを諦め、溜まり場の奥へと足を進める。
ここは八畳の個室が三つあったはずだ。
そのうちの二つはリンとカズイがそれぞれ使い、余った部屋は酒に酔い潰れてしまったものが眠る場所になっている
誰がそう決めたのではなく、自然な成り行きとしてそうなった。
 「リンのヤツもう寝てるかな?」
リンの部屋の前で呟いてみる。
だが返事がない。
 本当に眠っているのかもしれない。
リンの寝起きはあまり良くないし、それで八つ当たりされるのは嫌だ。
だが、今日は珍しくトモユキが活躍したのだ。
 一言くらいその事に触れて褒めて、認めて欲しい。
リンの部屋に入るか入らないかで悩むトモユキの前にカズイが現れた。
リンの隣の部屋のカズイ。
いつも当然のようにリンの傍にいるカズイ。
それが無性に腹が立って、何も言葉が出てこない。
 「……何やってるんだ、こんなところで」
さっきの独り言がカズイにも聞こえていたのかもしれない。
いつも穏やかなカズイの顔が少し引きつっている。
 「何も何も。せっかく俺が今日のBl@sterで活躍しても、頭がお休み中なんだと。盛り上がんねぇ」
トモユキは自慢げに言うが、リンやカズイはいつも今日のトモユキと同じ、いや、それ以上の活躍をしている。
それでも特別に祝いもしないし、それが当たり前だと思っている。
でもトモユキは今日初めてスポットが当たった、という感じでいかにも浮かれている。
カズイは『所詮こんなもんだ』とでも宥めればよかったのかもしれない。
でも口をついて出たのは。
 「じゃあ何か目立つ工夫でもしてみればいいんじゃないか?」
 「目立つ工夫?」
 目から鱗とでもいう様に何かひらめいたらしく、カズイと別れて珍しく自宅へ戻った。


そして次のBl@sterの試合。
 「お前、なにやってんの?」
 強豪チームとのバトル。
 暢気に構える余裕なんてない。
なのに――。
 「ペスカコシカ!二名以外へそチラだー!」
 実況がやけになったようにアナウンスする。
そう、リンとカズイ以外は皆不自然な形にチームの服のへその部分が切り取られていた。
これでどうだ、とでも言わんばかりのトモユキの顔に、今日は負けかと溜め息をついた。

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 2012年 7月26日 荘野りず

痛いトモユキ注意報。
トモユキは本編(ペスコシ壊滅後)でもリンに絡んでくるから、相当リンが好きなんだと思います。
リンルートあのままではシキに殺されて終わりだったけど、(一応)トモユキのおかげで何とかなったし。



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