「ねぇねぇアキラ!」
日興連で再会してからというものの、リンは毎日のように甘えてくる。
これが五年前なら微笑ましい光景だろうが、今のサイズではいかんせん大きすぎる。
しかも人前で甘えてくるものだからたちが悪い。
「少しは離れるとか、周りの奴に配慮しろよ。もういい歳だろ?」
こんな言葉でもリンはすぐに落ち込んだようだ。
街に買出しに出るたびこれだから始末に負えない。
まるで依存中毒だ。


【依存中毒】


「アキラぁ……」
せっせと働いた金で二人はちょっとした記念日を祝う。
イベントにはこだわらない主義のアキラだったが、リンの影響で祝うようになった。
こんなものは何も役に立たないけどね、とリンは苦笑交じりで昔の二ホンの習慣を教えてくれる。
「今日は雛祭りだね」
「ああ、忘れるとこだった。今日は端午の節句だ。男子の成長を願う日なんだよ」
そんな理由をつけてはいたが、陽は酒が飲みたいだけらしい。
酒好きが酒に強いわけではないことをリンを見ているとはっきり解った。
リンは弱い癖に限界まで飲むという酒癖があった。
昔から軽いカクテルしか飲まないからもしやと思っていれば案の定だ。
「おい、風邪ひくぞ」
アキラがそっと毛布を掛けてやるとリンはまるで天使のように眠るのだ。
「あ、きら……?だいすき」
――アキラ、大好き。
それはアキラにとってあまりにもくすぐったい言葉だった。
ケイスケが自分の事を好きだったと知ったのはリンと再会してからだった。
――そんなことにも気づかれないなんてね。ケイスケ可哀想。
成長して穏やかな顔立ちになったリンにそう伝えられ、アキラは困惑した。
ケイスケの事はただの幼馴染としか認識していなかったが、きっとケイスケはケイスケなりに苦しんであんな事をしたのだろう。
今思うと胸が痛む。
しかしアキラはリンとの新しい生活がある。
リンとは何度身体を重ねたか解らない。
リンが誘導してくれるからいつも上手くいく。
「リンの事を笑えないよな」
結局アキラも依存中毒なのだった。

朝食の合間にリンがそんな事を口走った。
ちょうど昨日はケイスケの事を思い出していたところだった。
意味深な言い方にアキラも身構える。
「ケイスケは……何か言ってたか?」
運命なんて信じていないし、幽霊も亡霊も信じてはいない。
ただ、リンの見た夢の中のケイスケの様子が聞きたかった。
「リンとお幸せに、だって。それで俺には『アキラを幸せにしないと呪うからな』って言ってたよ」
アキラは思わず笑う。
あんな事を言ったのに、そんな風に人の幸福を喜べるなんて。
「なんかやけに肩が重いんだよね。これってやっぱ、ケイスケが乗ってるのかな?」
「かもな」
ケイスケの事は忘れない。
リンがカズイの事を糧にしているように、アキラもケイスケの事を糧にして生きていきたい。
ケイスケの死を無駄にはしたくない。
何と言っても幼馴染だから。
大事な大事な思い出の人だから。
カズイの事を今もリンが思っているかどうかなんてアキラは知らない。
それでも、リンを大事にしたいし、リンもそう思っているに違いない。
そんな事を考えながら顔を上げると、そこには嬉しそうなリンの顔があった。
「ケイスケの事を思い出すなんて……浮気?まぁ俺はそんな簡単に譲ってあげないけどね」
このリンの不敵な笑みに、アキラはぎこちない笑みを浮かべるのだった。








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2014年 4月13日 莊野りず

ケイスケ→アキラ前提のアキリンでした。
ケイスケ→アキラが尺を取ってます。
三角関係って(創作前提で)好きです。
大人リンはあの美形っぷりに圧倒されます。
イケメン(襲い)受けいいじゃない。
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