手と手を合わせる。
それは互いに信頼し合っているというしるし。
だからアキラとリンは毎日ハイタッチする。


【手と手を合わせて】


「行ってくるよ、アキラ!」
リンがカメラや道具一式と軽い荷物を持って玄関先に立つ。
「ああ、行ってらっしゃい」
軽くてと手を合わせて、ハイタッチ。
今日はアキラの仕事は休みだった。
「じゃあ行ってきまーす!」
リンが元気よく三和土から去って行った。
それを見送るとアキラはリビングに戻る。
ここ一週間はリンが帰ってこない。
幸い暇というわけでもない。
待ち人がなかなかか会えって来ないのならば何かをして気を紛らわせるのも手だ。
とりあえずアキラは洗い物から手を付けた。
リビングとキッチンがつながっているこの狭いアパートには男二人暮らしらしく雑然と物が散らかっている。
この一週間のうちに全て片づけてしまえるだろう。
元々綺麗好きなアキラは淡々と洗い物に手を出した。


食器洗い、洗濯、化学洗剤を使った掃除。
それらを繰り返すうちに、アキラの手は荒れてきた。
でも女でもあるまいし気にしてなどいられない。
単調な日々を繰り返し過ごしていると、あっという間に一週間が過ぎた。
「ただいまー。アキラ元気だった?俺がいなくて寂しくなかった?」
リンの声は弾んでいた。
それだけリンにとって楽しい仕事だったという事だろう。
「ああ、別に寂しくなかった……いや。やっぱり少し寂しかったかな」
騒がしいリンがいないのも寂しいのは事実だった。
「ホント?お土産があるんだ。一緒に食べよ!……って、アキラ何その手!」
「え?」
機嫌よく帰ってきたリンがアキラの手を指さした。
その手は荒れに荒れていた。
「どうしたらこんな事になるの?」
リンは少し怒っているようだ。
「ただ部屋の片づけをしてただけだ」
アキラは正直に言ったが、リンは優しくアキラの手を握った。
そして手と手を合わせていつものようにハイタッチ……とはいかないが、ぱちんと音を鳴らす。
「皮膚科に行こう」
アキラはなぜリンがこれほどまでに自分の手にこだわるのかわからなかった。
「……俺はさ、アキラに頭撫でてもらうのが好きなんだ。それにアレの時にこのざらざらした手で触られちゃたまらないよ」
リンはからかうように笑ったが、それは本気らしい。
「……全く。お前には敵わないな」
アキラは短く呟いた。









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2014年 7月28日 莊野りず

アレ?なんかリンが攻めっぽい?
こういうプラトニックな話だとリンは攻めでもありだと思います。
元々襲い受けだし。
それにしてももっとましな話はなかったのか私!



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