――ホントは解ってた、カズイが俺なんかを見てるわけじゃないって事。
――ホントは解ってた、カズイが俺なんかを好きじゃないって事くらい。
――ホントは解ってた、カズイが――。
――それでも夢を見てしまったのは、俺の弱さ。


【していいよ】


何度目になるか数えていないからわからなかった、勝利の夜。
リンは慌てて走っていた。
溜まり場に行くために、カズイに優勝報告をするために。
リンはカズイが大好きだった。
優しい微笑み、夜空に映し出される青い髪、そして優しく撫でてくれる腕。
しかしそれもカズイの前では素直になれない。
これは少年独特のグレだと思っていた。
だから素直になれないのだと自分を納得させようとした。
だがそれも無駄だった。
沼に足を取られるように、リンの感情は渦巻いていった。
そこでリンは自覚せざるを得なかった。
――俺はカズイが好きなのだ。
男同士での結婚がありな国があるという事も聞いたことがあった。
出来ることならそこで添い遂げたいと思う。
でも問題はカズイが自分を好きでいるかどうかだった。


ある日、カズイに直接訊いてみたことがあった。
「カズイは俺のことどう思ってる?」
「危なっかしいリーダーだな」
カズイは笑っていた。
リンの想いなど知らないかのように。
「そうじゃねぇよ!」
「何カリカリしてるんだ?」
「……うるせえよ!」
カズイはああ見えて鋭い。
きっとリンの気持ちなどお見通しに違いない。
それがリンには面白くない。
――いつか一泡吹かせてやる!
そんなリンの気持ちを知ってか知らずか、カズイはリンに次の試合のオーダーを決める役割を振ってきた。
リンは適当に割り振ると鼻を鳴らしてその場を去った。


そんなリンの気持ちを知ったのか、カズイは二人きりの部屋でリンを呼び出した。
内心ドキドキしながらもリンはベッドサイドに腰掛ける。
クイーンサイズのベッドはスプリングが効いている。
「……リンは、俺のことが好きなんだよな?」
「誰がそんな事を?もしかしてトモユキか?アイツ……」
この話が終わったらしめてやろうと思うリンとは裏腹に
「あのさ、俺リンがしたいなら……していいよ?」 これではカズイが女役ではないか。
「いや、オレってこう見えて……その……ケーケンホーフだから!」
遠まわしに攻めて欲しいという事を訴えるとカズイは意外そうな顔をする。
今までこんな下ネタに関わる話をしたことがないからかもしれない。
「じゃあ、いいのか?手加減できないぞ?」
「覚悟してるよ」
リンは挑発的にそう笑った。
それでもカズイがしてきたのは絡みつくようなキスだけだった。
「……どうして?」
「俺にとっては大事なボスだからな」
物足りないまま、リンは一晩を悶々として過ごした。


それ?らいくらリンが仕掛けてもカズイがしてくるのはただのディープキスだけだった。
リンはそれに我慢できず何度も仕掛けてもカズイの忍耐力は並ではなかった。
そこがまたリンの好きなところでもあった。
カズイに心を許し、兄にも心を許して全てを失ってしまったリンはいつまでも思い出にしがみついて生きるしかなかった。





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2014年 4月26日 莊野りず

あえてここはカズリンプラトニックで!
リン受けの良さって襲い受けなのがよいのですよ!
リンは強気だから鳴かせがいがあります。



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