今夜も若者たちは中立地帯のクラブで盛り上がる。
その喧騒は中年の源泉にはついていけない。
苦い顔でビールを飲んでいると、待ち合わせた相手がクラブに入ってくるところが見えた。
「……ずいぶん遅かったな。一時間の遅刻だ」
源泉が腕時計を見つめながら不満を口にしても、待ち合わせた相手であるリンは堪えない。
「ごめんごめん。ちょっとホテルでアキラたちと会ってさぁ。トシマ初心者だし、放っておけないじゃん?」
リンはアキラの顔を見て露骨に反応していた。
何かあると源泉は見ている。
オヤジの勘も馬鹿に出来ないものだ。
「で、そのアキラたちとは?」 「ホテルで別れた。行くとこがあるとかって言ってたよ」
がっくりと肩を落とすリン。
「……でも頼まれてた写真は現像できたよ。はい」
ウエストバッグの中から写真の束を取り出し、源泉に渡す。
こればかりはリンに頼むことが確実だ。
「おう。いくらだ?」
「五千円でいいよ」
いつものやり取り。
この会話を終えると、リンは飲み物を取りにマスターの元へと向かう。
源泉はそれを見送りながら写真に視線を移す。
「……なんだこりゃ」
リンが源泉の元へと戻ってくると、源泉はリンに写真の束を突き返す。
「?」
飲み物を持ったままキョトンとするリン。
「リン、これ全部アキラの写真だぞ」
「え?あれ?俺、メモリーカード間違えて渡しちゃった?」
その言葉に、今度は源泉が肩を落とす番だった。


【傍観者の意見】


「大体な、お前は露骨すぎるんだ」
気を取り直してビールを一杯、一気に飲む。
「態度が?それとも親切にしすぎとか?」
リンはカクテルを片手に気のない素振りだ。
「傍観者の俺から言わせるとどっちもだ。アキラに気に入られようと必死すぎて見てるこっちが冷や冷やする」
「……そういうもん?」
「ああ。……何なら俺が手とり足とり教えてやろうか?」
「手とり足とりって響きがやらしいけど、アキラに好かれるためならそれもアリかもね」
リンは甘いカクテルを一気飲みすると挑戦的に笑った。


源泉の隠れ家の教会で、恋愛テクニックを教わる事になった。
「いいか?まず追うな。追われると逃げたくなるのは動物なら当然だ」
「俺なら振り向いて返り討ちにしてやるけどなー」
やる気のないリンをいきなり源泉が押し倒す。
あまりにもいきなりで、抵抗もできなかった。
「ほれ見ろ。お前が普段アキラにしてる事はこういう事なんだ」
「……解ったからどいてよ。煙草の臭いと加齢臭で臭い!」
洒落でやっているつもりだが、嫌がるリンにだんだんその気になってくる。
「……オッサン?」
自分の中の劣情を押さえようとするが、収まらない。
それどころかどんどん肥大していく。
「授業料だ」
黙っていた源泉の目が鋭く光ったのをリンは見逃さなかった。
これは自分を抱きたい男が見せる目だ。 一応抵抗はしてみるものの、たまにはこういうのも悪くはないと思う。
――オッサンっていくつなんだろ?俺の父さんと同じくらい?
組み敷かれながらもそんな事を考えてしまう。
源泉の手は流石はリンに恋愛テクニックを教えてると言った者らしく、巧みに動いた。
「あっ……そこっ!」
源泉の冷たい手がリンの胸元を怪しく探る。
むず痒いような、もう少し触ってほしいような、そんな感覚がリンを支配する。
「もっと……触って」
その言葉に応えるように、源泉は刺激を強めていく。
強くつままれた乳首が電流のような刺激を全身に走らせる。
「あぁぁっ!」
「もう出したのか。早いな、いや若いからか」
出したものでドロドロになった下着ごとショートパンツを脱がす源泉。
羞恥を感じる間もなく、源泉はリンのものを口に含む。
その舌遣いも巧みで、またイってしまいそうだ。
リンはその前に自分で後ろをほぐす。
今は痛みよりも快楽の方が大きかった。
「よしよし。自分でやるなんて偉いぞ」
源泉はリンの頭を撫でる。
その手にはリンの出したものがたっぷりとついている。
頭を撫でられたことで金の髪に白いものがついた。
「……オッサン……わざと?」
リンの余裕のない声に源泉はにやりと笑う。
「金と白のコントラストが綺麗だぞ」
「……悪趣味」
そうは言っても、身体の火照りは消えそうもない。
源泉が後ろに突っ込むとリンは嬌声を上げてよがった。



疲れてぐっすりと眠ったリンの身体を拭いてやりながら、源泉は目を細める。
――アイツも生きていたらこれくらいの年頃か。
傍観者を決め込むつもりだった。
でもリンはどこか危なっかしい。
だからせめてこれくらいの肩入れくらいはしてもいいだろう。
源泉はそう自分に言い訳した。







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2014年 9月15日 莊野りず

リン→アキラ前提源リンでした。
なぜか最近源リンが私の中で来てます。
オッサンは守備範囲外なのに、おかしいなぁ。
ちなみに私はリンが受けなら大体いけます。雑食もいい加減にしろ!



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