こうして鎖でつながれてから何日が過ぎたのだろう。
生憎と部屋にはカレンダーも時計もないので、そんなことは解らない。
部屋に一人きりで閉じ込められて気が狂いそうだ。
しかしそれよりなにより、今のリンは飢えと渇きに苦しんでいた。


【飢えと渇き】


三日くらいは何も食べなくても平気だと思っていた。
実際、Bl@sterに参加していた頃は三日三晩飲まず食わずで喧嘩に明け暮れていた時もあったくらいだ。
だがそれでも大丈夫だったのは、体内時計が喧嘩によって狂っていたからだ。
今のリンは、シミがポツポツある天井の部屋に監禁されている。
水すらも、もう何日も飲んでいない。
元から細かったリンの身体は、ここ数日で急激にやせ細っていった。
棒のような自分の手首を見るたびに、あの時のことを後悔せずにはいられない。
トシマに来る目的となった男、シキに向かって無鉄砲に飛び出していったことを。


その日のリンは上機嫌だった。
ホテルでアキラと二人きりで会えたし、その後も一緒に星空を見たし。
その時はアキラと一緒にいられるということだけで満足だった。
しかしリンしか知らないはずの廃ビルに突如処刑人が現れたのだ。
狗は連れていなかったから、いつもの気まぐれで違反していない者を嬲るのが目的だとすぐに解った。
リンとアキラはキリヲとグンジと一対一となる形になり、別れて逃げ出した。
処刑人に捕まったらおしまいだ。
リンはスピードには自信があったが、キリヲは予想以上に速かった。
あっという間に追いつかれ、鉄パイプで後頭部を殴られた。
それから意識が戻るまで数時間かかったとアルビトロは言った。
目を覚ましたリンは自分が鎖でがんじがらめにされていることに気づいた。
「おい……どういうことだよ!俺は違反なんてしてねーよ!」
イライラして昔の言葉遣いで言ってやると、隣の部屋から思わぬ人物が顔を出した。
「シキ!」
シキは興味深そうにリンをまっすぐ見た。
これまでそんな事は一度もなかったのに。
「これは、どうするつもりだ?」
アルビトロに尋ねるシキは平静そのものだった。
「少し幼いが、私のコレクションにしようかと……」
「駄目だ。コイツは俺が貰う。逆らう事は許さない」
きっぱりとした口調でシキはアルビトロを睨みつけながら言った。
当然、アルビトロには返す言葉もない。
「……では、ご自由にどうぞ」
その口調には残念だという響きが混じっていたが、相手が相手なので仕方がないと諦めているようだった。
シキはリンに向き直るとこう言った。
「成長したお前がどれだけ俺を楽しませてくれるか……楽しみだ」
リンの顎を持ってそう囁くシキの声に、リンは内心恐怖を感じた。
それからこの監禁生活が始まった。


「帰ったぞ」
数日間留守にするというのに、水の一本もソリドの一袋も置いて行かないシキに怒りを覚えたが、今更だ。
腹が空きすぎて痛いくらいだ。
やつれたリンの顔を一目見るなり、シキは満足そうに笑う。
「主人を待つのは辛かったか?」
もう抵抗する気力も体力もない。
「……誰が、主人だ」
恐らく自分はここで死ぬのだろう。
他の誰でもなく、シキに殺されるのならばきっと天国の仲間たちも解ってくれる。
食事を抜いたのはもしかしたらシキなりの気遣いかもしれない。
――まさか。
頭からそれを否定する。
「飢えて、渇いて、辛かっただろう?さあ、食べるか?」
水のペットボトルとソリドを差し出してくるシキの手が歪んで見える。
手を伸ばそうとして、やめた。
「……アンタの施しは、受けない」
それがリンの短い生涯の最期の言葉となった。





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2014年 11月10日 莊野りず

これは果してカプモノなのか?
シキアキの監禁プレイをシキリンで再現してみようかとも思ったんですが、リンが大人しく水やソリドを受け取るはずがないのでこうなりました。
バッドエンド萌えです。
ケイアキの腸エンドなんか腸萌えました。
どなたか同志様いらっしゃいませんか?



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