最初は可愛い弟だと思った。
反抗期直前を迎えて尚、可愛い弟だろうと父からの手紙で知った。
こう見えて可愛がってきたつもりだったのだ。
それなのに、なぜあんな奴らと……。


【心臓、鷲掴み】


ペスカ・コシカの粛清には全力を尽くした。
可愛い弟があんな奴らと付き合っているなど信じがたい事実だった。
――アイツらを殺せばきっと弟は目を覚ましてくれる。
そう信じて疑わなかった。
しかし現実はそう単純ではなかった。
なんとあの弟が自分に復讐するためにイグラに参加するようになったらしい。
どこで歯車がくるってしまったのだろうか。
幼い頃から心臓を鷲掴みにするような笑顔の弟。
みんなに愛されて祝福される弟。
腹違いの彼にはふさわしい人生だと思った。
それなのにどうしてイグラなんかに参加する必要があるだろう。
アルビトロを脅してももう参加は受付済みだと拒否された。
――お前はそこまでして俺を倒したいのか?
シキは初めて胸が焦がれる思いを味わった。
あの愛らしい弟がこの街でやっていけるわけなどない。
――早く家に戻れ。
シキがそう念じてもリンはシキに襲い掛かってくる。
スティレットを構え全力で。
それならば応えてやるのが愛情というものだ。 シキは殺さない程度に相手をするが、毎回ではそれも疲れてくる。


「俺は疲れているのかもしれんな」
何度目かのリンとのやり取りで少々足を切っていた。
それでも消毒もしないのはシキの悪い癖だった。
< 「……」
殺せやしない。
可愛い弟を。

大事に育ててきたつもりだった。
なのに、リンは実家を出てしまっている。
連絡を取る手段などなかった。
「……リン」
大事な大事な弟。
愛しい弟。
「なぜ俺の気持ちを解ろうとしないんだ!リン!」
そんなシキの気持ちなど解りはしない。
シキがリンの気持ちなど解ろうともしないくせに。





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2014年 8月5日 莊野りず

キャラ崩壊でお送りしました。
シキがリンを可愛がっていた描写なんてろくにないけれど、シキがリンの事を可愛がっていれば萌えませんか?
あくまでも昔のリン限定で。



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