あの青に近い髪の色。
それは月の光によってのみ解る。
あの気遣わしげな声。
本気で心配してくれている声だと解る。
リンは彼の事が大好きだ。


【何も考えられない】


カズイは昔からいる、いわゆる古参メンバーの一人だった。
Bl@sterで暴走しがちなメンバーのストッパー的な役割をしてくれている。
リン自身も彼には散々世話になっている。
何か例の一つや二つ。
そう思っていても、いざカズイの前に出ると声が出ない。
何も考えられなくなり、言葉が出てきてくれないのだ。
「……?どうしたんだ、リン?」
カズイの気遣わしげな声。
その中には優しさが滲み出ている。
なのについ反抗的な態度を取ってしまう。
「なんでもない!」
――またやっちゃったよ、俺。
その度にリンは後悔に苛まれる。
もっと素直になる方法があればいいのに。


何も考えられなくなるのは夜空の星々を見ている時もそうだった。
頭の中を空にしてただぼんやりと空を見上げる。
――星って何万年も燃え続けてるんだよな。
ふとそんなことが頭に浮かぶ。
幼い頃に兄に教えてもらった事だった。
「隣、いいか?」
気づくとそこにはカズイがいた。
また、頭の中が空になる。
嫌だと内心では言ってしまいたい。
それでも断れないのはリンがカズイの事を好きだから。
「……別に。好きにすれば?」
つい突き放した物言いになってしまう。
返事を予知してか、それとも返事など聞いてないというつもりか、カズイはリンの横に腰を下ろした。
「やっぱり今日は綺麗な星空だ。昼間はあれだけ晴れていたからかな」
穏やかな空間がその場に広がる。
カズイはいつでも穏やかだ。
たまに怒る事もあったけれど、それは仲間を心配しての事だ。
――まずい。何も考えられない!
そうなるのはカズイのいる時だけで、他の仲間とは上手くやっている。
もしかしたら自分はカズイが苦手なのかもしれない。
カズイはそんな事を考えているなど露にも思わず、リンに声をかけてきた。
「リンはいつから星が好きなんだ?」
「え?」
突然の質問だった。
しかしこれくらいなら考えなくても解る。
「ちょうど訓練校に入学する年。それまで母親に禁じられてた」
それを聞いたカズイは驚いた。
「もしかしてリンの母親って教育ママて奴か?大変だったな」
そう言って、一つ年下のリンの頭を撫でてくる。
思わず本音を漏らしそうになるが我慢した。
実家では兄と比べられる毎日だった。
母親はヒステリックにリンに勉強を強制した。
その頃はろくな抵抗手段など思いつかなかった。
だから今こうしてカズイが認めてくれることが嬉しかった。
何も考えられない。
けれどキスするくらいなら出来る。
リンは一瞬のうちにカズイの唇を奪うとビルから去って行った。
残されたカズイはその意味がよく解らなかった。








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2014年 6月29日 莊野りず

リン→カズイ、プラトニックでした。
やらなきゃエロではないですよね(汗)?
リンは強気な半面で、臆病だと萌える。



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