傭兵の仕事が休みの日は実家に帰る事が多かった。
実家の別邸の縁側で日本刀を手入れしながら、愛犬と遊ぶ腹違いの弟を眺めるのが密かな楽しみだった。
ドーベルマンにも怯むことなく無邪気に戯れる義弟は何よりも輝いて見えた。
「お兄ちゃん、僕算数もだいぶ覚えたんだよ!」
その笑顔は、裏社会に生きるシキには眩しすぎた。
――その笑顔を歪ませてやりたい。
そんな物騒な事を考えるようになったのはその時からだったと今になって思う。


【濁った涙】


「なぁに?お兄ちゃん」
夜になってもシキは自室の電気をつけない。
暗闇に慣れるため、夜目が利く様にするために訓練しているのだ。
夕食の後、シキはリンを呼び出した。
滅多に帰る事のない自室は必要最低限の家具しか置いていない。
ベッドと書き物机、本棚くらいだ。
「……リン、俺の事が好きか?」
シキの低い声が部屋中にこだまする。
躊躇いがちにリンは首を上下に振る。
その答えにシキは満足げに口角を上げた。
リンには背中を向けているので、その表情の変化には気づけない。
「そうか。ではその証拠を見せろ」
「……証拠?」
まだ変声期にも入っていないリンには何を持って証明するかなど解るはずもない。
「簡単な事だ。服を脱げ。下着も全てな」
リンは直感的に嫌だと感じた。
詳しい事は何も解らないが、本能が危険を告げている。
「あ、あの……他の方法じゃダメ?」
「駄目だな」
シキはにべもない。
リンは観念して服を脱ぎ始めた。
今日は両親もメイドたちもいない。
正真正銘二人きりだ。
静かな部屋にするすると響く衣擦れの音がシキの耳に心地よく響く。
よほど恥ずかしいのか裸になったリンは、カーテンで身体を覆った。
ちょうどその日は満月で、カーテンに映るリンの身体のラインのシルエットが綺麗だった。
シキは思わず唾を飲んだ。
いつから弟はこれだけ色気を纏うようになったのだろう。
まだ十代前半だというのに、この調子では数年後にはどれだけ色っぽくなるのだろう。
――他の誰かに犯される前に俺が――。
リンは居心地が悪そうにもぞもぞしている。
「どうした?こちらに来い」
シキは知っていた。
リンがシキの命令には逆らえない事を。
未練がましくカーテンに身を隠していたリンは、ゆっくりとシキに近づく。
「……いい子だ」
柔らかい金の髪を撫でてやると、リンはくすぐったそうに身をよじった。
そうしながらもリンは不安そうに尋ねた。
「……ねぇ、これから何をするの?」
シキは素早くリンをベッドに叩きつけるように押し付けた。
「……お前を大人にしてやる」


「お……とな?」
反射的に体を起こそうとするリンを無理やりベッドに縫い付ける。
細い骨が軋むような音がした。
「っつ!」
リンが目じりにうっすらと涙を浮かべる。
だがシキはそんな事お構いなしだ。
細くて白いその首筋に歯を立てる。
再びリンの目から涙がこぼれる。
そのまま舌を鎖骨に這わせ、また歯で噛む。
「お兄……ちゃ」
いつもの、太陽の下で輝くリンの顔が恐怖に歪んでいる。
そのままシキは要所に噛みつき、胸元まで迫る。
リンの息が荒い。
そこを咥えるとリンの身体が痙攣した。
「やめっ…っ…そこ、変な感じがする……から!」
舌で転がした後、思い切り噛むとリンは悲鳴を上げた。
よく見るとうっすらと血が出ている。
「……こちらではもう快楽は感じないか」
シキは何でもないことの様に言うと、もう片方の乳首を指で弄りだした。
つねり、転がし、引っ張る。
それだけでもうリンは限界だった。
イケないよう握っていた小さな性器が膨張して苦しそうだ。
シキはそれを見てほくそ笑んだ。
「いけない子だ。罰として慣らしはなしだな」
「慣らし……って?」
シキは何も言わず、リンの性器から手を放す。
そして無理やりリンの足を開かせた。
「なっ、何する気?」
こんなになっていてもリンはシキを信じている。
いや、信じていたいのだ。
「すぐ済む」
心底面倒くさそうに言い放つと、シキは己のモノを一気に突き入れた。
リンの口から声にならない悲鳴が響く。
「痛い」と言ったのか、「嫌だ」と言ったのか、はたまた「イイ」と言ったのか。
それはもうシキにとってはどうでもいい事だった。
遊び飽きた玩具に飽きるように、光輝く笑顔を見せていた腹違いの弟の濁った涙を見てしまえば、シキにとっては用済みだった。
意識を失って全裸で眠るリンをそのままに、シキは仕事場に向かった。












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2014年 10月日 莊野りず

シキリン+エロ+無理やりという、需要がなさそうなものですが書いてみました。
シキは対リンだと甘々か鬼畜かどうしても偏ってしまう……。



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