無分類30のお題 →TYPE2

23、記憶(アキラとリン)


  

実家にいた時はとにかく優しくて、理想で、目標だった。
届かないと知りつつも様々な習い事をこなし、必死だった。
しかし再会した彼は昔の彼とは全く違った。
全てが変わってしまったかのような、真紅の目。
仲間たちを殺されてはじめて、彼の変貌に気づいた。
確かに兄との思い出はこの胸にある。
今は憎い仇だけれど、かつては慕った、大事で大きな兄だった。
今も許せないでいるのはその反動か。
今日もリンはスティレット片手に彼に飛びかかる。


幼かった弟などただの『弱者』に過ぎない。
自分の価値はただ純粋な強さのみにある。
それ以外の物は欲しいとも思わない。
ただ、奴だけは許せない。
殺せるのに敢えて見逃した、あの男。
何度屈辱の夢を見ただろう。
何度あの戦場の夢を見ただろう。
早く会いたい。
今、俺はトシマにいる。


リンとシキ、二人の言い分を聞いたアキラは首を傾げた。
二人の証言が矛盾しているし、かみ合っていない。
とりあえずリンはこれ以上無茶をしないよう監禁してある。
もうしばらくすれば目を覚ますはずだ。
二人に戦う理由などあるのか。
そしてそれを知ったとしても、止めていいのだろうか。
リンを看病しつつ外をちらりと見るとそこには何度か会っただけの男が立っていた。
なぜか、この機会を逃してはいけないと、アキラは外に出た。


「……あの二人は俺のせいで狂った」
「え?」
「ニコル……あの男は戦場で俺に出会った。そして敗北した。そして感情が歪んだ」
真っ直ぐに、アキラの瞳を見る男。
「俺が……歪ませた」
それだけ言って去ろうとする。
「待て!」
しかし既に彼はいない。
言っている事の意味が理解できないが、何か複雑な理由があるのだろう。
アキラは彼が走り去った方向と逆向きに慌てて部屋に戻った。



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2015年 4月21日 莊野りず

色々とルート曲げてます。
二人の記憶がニコルであるところのnと接触したことによって歪んだって話です。
もちろん公式にはそんな設定なんてありません。





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