リィディエールと和解し、人間軍の悪魔たちへの誤解も解けた。
後は大天使長メルディエズを倒すだけだ。
レイジ、リィディエール、その他の仲間たちは天界を目指した。


【幾度も見た夢の中】


レイジたちが展開で戦っている頃、ジーナローズは自身の精神世界で夢を見ていた。
人間が自分を嫌わない夢。
仲間である悪魔が人間を殺さない夢。
人間と悪魔が敵対しない夢。
人間が天使たちに利用されることのない夢。
いつしか何が夢で何が現実化も解らなくなっていた。
でも、ジーナローズはそれでいいと思った。
どうせ夢なのだ。
実際に叶うわけもない夢物語にこれ以上振り回されたくない。
けれど。
もしも実際にこの夢が叶うなら、これほど素晴らしいことはない。
せめて悪魔と人間が敵対しなくなれば復活しても構わないとジーナローズは思った。
――でもあるわけなあいわ、そんな事。
長い時の中を生きてきた彼女には種族の壁がそんなに簡単に取り外せるものではないということは解っていた。
ならば夢見るだけ無駄だ。
そして再び彼女は眠る。


「やぁッ!」
リィディエール自慢の槍が全く当たらない。
果してそれはレイジの剣も同じことだった。
パージュとユーニの魔法はどうにか当たるものの、メルディエズの回避率は異常だった。
「くそっ!何か手はないのか!」
「貴様など所詮はその程度なのだ!それと喋るサル、貴様もだ!」
メルディエズは余裕の笑みを浮かべる。
戦闘を開始してもう一時間になる。
こちらの疲弊は増すばかりで、向こうはあくまで余裕の構えを崩さない。
「レイジ、私の槍が通じないなんて……」
リィディエールはもう諦めかけている。
レイジはそんな彼女を叱咤する。
「諦めるな!きっと突破口はあるはずだ」
だが、そう言うレイジにもどうしていいのか解らない。
ヴィディアもギルヴァイスも魔力を使い果たしている。
このままでは圧倒的不利だ。
「どうにかならないのか……」
その時、脳内に声が聞こえた。
――魔法よ。彼は魔法は回避できない。
誰のものかははっきり解った。
つい最近この声を聞いたからだ。
「ギル!魔法だ!パージュとユーニもどんどん魔法を放て!」
急に元気になてレイジを訝しみながらも、仲間たちは指示に従う。
魔法の連続攻撃。
やがてメルディエズは果てた。


魔界に戻ると思わぬ出迎えが待っていた。
大勢の悪魔の中心にいる、リィディエールとそっくりな女性。
「お帰りなさい、レイジ」
それは紛れもなくジーナローズその人だった。
「……幾度も夢を見たわ。貴方たちと人間たちが和解する夢」
レイジもリィディエールも彼女の話を黙って聞いている。
「これは私の精神が見せる都合のいい夢だと思った。……だけどそうじゃなかった」
ジーナローズは心からの笑みを浮かべた。
「メルディエズとの戦いの時にアドバイスをくれたのはやっぱり姉さんだったんだな」
ジーナローズは頷く。
そしてレイジに近づくと、頬にキスした。
「本当に……ありがとう、レイジ」
その時、気まずそうにしていたリィディエールがおずおずと前に出た。
「魔王ジーナローズ、私たちは貴女を誤解していました。許してくれとは言いません。何か償えることはありますか?」
態度は人間代表として恥ずかしくないものだとレイジは思った。
「そうね……それでは、また会いに来てくれるかしら?」
「そっ、そんなことでいいのですか?」
「なんならずっといてくれても嬉しいわ。貴方たちを私は愛しているから」
これは本気だ。
今度はレイジがどうしたらジーナローズから人間を引き離せるか考える番だった。
しかし、以前のような嫌悪感は全くなかった。







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2014年 8月7日 莊野りず

姉さん幸せルート捏造。
ジーナローズ様が幸せになるルートってリィディエールルートしかないんですよね。姉さんどんだけ薄幸なんだ!
リィルートですが、レイジナだと主張します。
リィディエールも彼女のルートだといい子なのに、サファエルルート以外だと極悪人だよ!
他にも姉さんが幸せになれるルートがあればいいのにな。



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