レイジは元から強いわけではなかった。
昔は弱い部類に属していたかもしれない。
その事は魔界の悪魔たちの大多数は知らない。


【伝説の始まり】


初めてユーニと出会ったのは姉の紹介からだった。
ジーナローズは彼を『困った子』だと評した。
一見女子にも見えるこの少年のどこが困った子なのか。
理由はユーニに誘われて彼の居城を訪れた時に悟った。
「見て見てレイジ!こんなに集めたんだよ!凄いでしょ!」
そう得意げに言いながら、黒白問わず翼を集めるユーニには吐き気がした。
同族を殺してもなんとも思わないのかと訊いても、その返事は曖昧なものだった。
「うーん……ボクそういうのよく解らない。同族っていっても所詮は他人でしょ?」
その言葉にユーニの狂気と強さの秘密を見た気がした。
レイジはしばらくユーニの居城で過ごさせてくれと頼み込んだ。
ユーニは一も二もなく了承してくれた。
きっと遊び相手が欲しかったのだろう。


ユーニとともに過ごすうちに彼の強さの秘密を知った。
武器の選び方だ。
ユーニは華奢でとてもではないが撃剣など扱えそうもない。
速剣術という魔界では少数派の剣術をいつも利用した。
ユーニの使う短刀はテレポートという付加価値もついていた。
レイジはユーニに速剣術を習おうとしたのだが、仮にも魔王の弟がまるで女の扱うもののような短刀を使うのにはいささか躊躇われた。

速剣の代わりに護剣術を魔王城に戻って習ったところ、とても馴染んだ。
細身ながら男性らしい体格のレイジにはそれがぴったりだった。
ジーナローズも、幼馴染兼部下のヴィディア、ギルヴァイスも強くなったと認めてくれた。
それはとても心地よかった。
――俺はこれで姉さんを守れる。
レイジはそう強く思った。


やがてレイジはユーニを仲間に引き入れ、パージュ、フォレスターとも対等に話せるようになった。
昔は姉の後ろでびくびくしながら様子を窺っているばかりだったのに。
「あたしはカルテットなんて呼び名に興味なんてないね」
「……私も同じくだ。魔王の権威に胡坐をかいている者の言うことなんて従う気にもならん」
この二人の言い分は尤もだった。
レイジはそれ以上何も言わずに会話を打ち切った。


その夜の自室で、レイジは腰にぶら下げた一対の双剣を抜いてみる。
そこには何人かを着た時に出来た錆があった。
「……必ず俺は魔界の覇者になる。そして姉さんを幸せにする」
その誓いはレイジ自身の胸の中にそっとしまわれた。









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2014年 6月14日 莊野りず

キャラの名前ばかり多く出しすぎた感じですね。
レイジも実戦経験がない頃は弱かったと思うんですよ。その辺は魔王の弟君という事で庇ってもらっていたのかと。
レイジのシスコンは一生治らないでしょうね。



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