幼い少女の血と髄を啜るか、自分が死ぬか。
これはルカにとって究極の二択。
出来る事ならばどちらも選びたくはない。
でも時間がそれを許してくれない。


【究極の二択】


ホワイトフェイスによって無理やり体内からペインリングを取り出されたリリスは虫の息だった。
このままでは無駄死にでしかない。
言いづらそうにエクサルが言う。
「……嫌だろうけどさ、リリスもルカに生きていてもらえるならそっちを選んでほしいと望むと思うんだ」
シリアはただ泣いている。
妹同然の少女を失った悲しみはいかほどだろう。
「……アタシにこの子の血と髄を食べろって言うの?!」
エクサルは憶さずに反論する。
「だってこのままじゃリリスもルカも二人とも死んじまうんだぞ?それこそ無駄死にだ!」
「エクサル……」
カインもエクサルの意見に賛成らしい。
態度は控えめだが目で解る。
「……ルカ。俺は、俺たちはお前に生きていてほしいんだよ」
ザイオンも諦めきっている。
それでもルカはリリスを見つめるだけ。
やがてシリアも涙でぬれた顔を上げた。
「……お願いですルカさん。リリスの最期の望みを叶えてあげてください」
「この子の最期の望みがアタシに食べられることだっていうの?!」
ルカは自分も苦しいはずなのに一切手をつけようとしない。
このままでは堂々巡りだ。
カインは意を決して言う。
「ルカ、リリスの望みを解ってあげて」


「……解ったわよ」
しばしの沈黙を破って、ルカは覚悟を決めたようだった。
「ルカ……」
ザイオンが安心したように言う。
「ただし、アタシは他人の言うことなんか聞かない。アタシはアタシの意思に従う」
そう言ってルカは自分の翼を剥ぎ取り始めた。
「な、何をしてるの?!」
「やめろルカ!ただでさえ弱ってるのにそんな事をしたら……」
ザイオンが初めて焦りを見せた。
ルカは止めようとするザイオンを振り払う。
「邪魔すんじゃないよ!」
それから聞くに堪えない悲鳴が響いた。


やがてルカは自らの黒い翼を身体から引きはがすと、リリスに装着した。
「生きて、リリス」
――アタシは自分の死など恐れない。だってアタシは戦士なんだから!
そんな思いが通じたのか、リリスは意識を取り戻した。
その代わりにルカは気力のほとんどを失った。
だが不思議と後悔はなかった。







____________________________________________________
2014年 6月27日 莊野りず

ルカが翼を託したのには感動しました。ストーリー的にカプ話抜きではかなり好きな部分です。
自分が死ぬか仲間から白い目で見られながら生き続けるかと問われたら、生き続ける方を選ぶんじゃないでしょうか。
なのにルカは凄いや。あのままお亡くなりになるには惜しいキャラです!



B/Mトップに戻る
inserted by FC2 system