カルディアが死んだ。
シリアがつきっきりで慰めなければならないほどにベイルは落ち込んでいた。
スティエンは涙を必死にこらえている。
誰もが彼女の死を悲しんでいる。
だがここにもう一人、深く悲しんでいるものがいた。


【手と手を合わせて】


「……キロタ」
リリスは部屋の隅でまるくなっているキロタにそっと声をかけた。
顔は膝の間に挟んでいるので、その表情は解らない。
それでも同じインセストであるリリスにはキロタの悲しみが解った。
「……リリスちゃん」
キロタは顔を上げる。
目元には涙の跡がくっきりと残っていた。
男の子としては好きな少女に泣き顔など見られたくはないものだ。
それでも顔を上げたのは、リリスならこの悲しみを解ってくれるという期待があったからだった。
「キロタは……かなしいんだね」
リリスはキロタが膝の上に乗せた手を取った。
「?」
不思議に思うキロタ。
リリスの手はとても暖かかった。
「リリスちゃん?何を……」
キロタの手は握り拳を作っていた。
それをリリスは丁寧に広げる。
そして自分の手とキロタの手を合わせる。
「あのね、教団にいたとき、となりのおりに、おにいちゃんがいたの」
リリスは懐かしそうに目を伏せた。
「今はどこで何をしているかはわからない。だけど、こうして手と手を合わせているとおちつくっておしえてくれたの」
確かに冷え切ったキロタの手は温かいリリスの手によって暖められている。
どこか、落ち着く。
ただ手を合わせているだけだというのに。
何という安心感だろう。
これもリリスのインセストとしての力なのだろうか。
「……ありがとうリリスちゃん。本当に、落ち着くね」
キロタの顔に微笑みが浮かぶ。
気持ちがよくなって、そのまま睡魔に飲み込まれた。


「あら?」
シリアがベイルの慰めを終えてダリア・ビアーに戻ると、二階の子供部屋でキロタとリリスが手を取り合って眠っていた。
手と手を合わせて、一切の苦しみからも解放されたかのように眠るキロタの表情に、シリアは安堵した。
――お兄様以上にキロタ君は辛いはずなのに。
それなのに少し幸せそうでさえある。
これもリリスのおかげなのだが、鈍いシリアにはその事は解らなかった。
手と手を合わせた二人の昼寝姿は、シリアを朗らかな気持ちにさせるのだった。








__________________________________________
2014年 11月25日 莊野りず

前に書いたキロタ→リリスが思ったより好評だったのでこの二人でほのぼの。
子供同士のカプって幼さがまたいいスパイスになるんですよね。
前はキロタ→だったので、今度はリリス→です。
カプのつもりで書いたんですが、「&」の方が正しいかも。



B/Mトップに戻る
inserted by FC2 system