レイジの必死の説得により、ジーナローズは無事復活を果たした。
喜ぶ一同、当然士気も段違いに上がる。
一仕事終えたレイジは休息を取ろうとその場を去ろうとしたところで、ギルヴァイスに引き留められた。
「なんだ?俺の仕事は終わったはずだぞ?」
「そう邪見にすんなよ。……お前をジーナローズ様の弟君だと見込んで、一つ仕事を頼みたい」
この時点で何か嫌な予感がしたが、ギルヴァイスの目は笑ってはいなかった。
何か強制的にさせようとする強い力の宿った目だった。


【何が欲しい?】


ユーニ、パージュ、フォレスターのカルテットの面々はジーナローズ復活記念パーティの始まりを待っていた。
いや、正確には待たされていた。
ギルヴァイスに口八丁で足止めを食らっている彼らはイライラが頂点に達しそうだった。
「私は帰らせてもらう。行くぞ、マリアージュ」
「みなさんごめんなさい!あっ、置いてかないでくださいよぅ、マスター!」
空気を読まないフォレスターはマリアージュを伴い、一人先に帰ってしまった。
パージュは一応レイジには恩を感じているため残った。
ユーニは自由に魔王城を見物できると喜んでその辺を飛び回っている。
「もうすぐですから!」
パーティ用のご馳走がすっかり冷めても、ギルヴァイスはひたすらご機嫌を取る。
全てレイジのためだと自分を正当化させつつ。


ジーナローズと対峙するレイジは困り果てていた。
ギルヴァイスに言われた通りの事をしたせいで、空気が重い。
『ジーナローズ様に何が欲しいか聞いて来いよ。それをこっそり準備して、サプライズだ!』
ギルヴァイスは深く考えていなかったのだろう。
いつもジーナローズの事ばかり語る自分の背中を押すつもりだったのかもしれない。
……だがそれは全てが裏目に出た。
彼の言う通り、何が欲しいかと聞くと返ってきた返事は『人間たちの愛』。
あまりにも重すぎる欲しいものだ。
レイジたちが容易く手に入れられるものではない。
ジーナローズは、やっぱり無理でしょう?とでも言いたそうに苦笑するだけだ。
ギルヴァイスを怨むしかなかった。


結局復活記念パーティは冷めた料理をみんなでもそもそ食べるという、地味すぎるものになった。
ジーナローズの復活により、魔力の供給は元に戻った。
しかし目的を達成してしまった後では退屈を感じていた。
そんな時、リィディエール処刑の報がもたらされた。
「本当なのか?」
「ディールとフィリスの情報収集能力はオレが保証する。間違いないだろうな」
レイジの疑問にもギルヴァイスはあっさりと肯定した。
「なんだって人間ってのは天使の言う事をホイホイ聞いちまうのかねぇ」
そうぼやくギルヴァイスを尻目に、レイジは出撃準備をヴィディアに命じた。
「人間なんてほっとけばいいのに」
ヴィディアも反対だったが、流石にレイジに刃向うつもりはない。
レイジはジーナローズに天使が人間を利用している、黒幕は天使だと告げる。
「……私が眠っている間にそんな事に……。レイジ、お願い人間たちを戦いから解放してあげて」
「もちろんだ。姉さんの望む『人間の愛』、手に入れてみせる!」
行くぞ、とレイジは仲間たちとともに出陣した。


魔力が身体中に満ちているレイジたち悪魔軍には人間軍はあっさり撤退した。
リィディエールは一人取り残された。
「私も殺すのだろう?早くやれ」
彼女はレイジたちがこの混乱に紛れて以前の恨みを晴らそうとしているのだと誤解している。
「違う。俺たちはお前を、お前たち人間の全てを助けに来たんだ!」
「え?」
レイジの言葉に目を瞬くリィディエール。
ギルヴァイスが軽い口調で言う。
「うちの大将は変わりものでねぇ。魔王ジーナローズ様の弟らしく、人間に入れ込んでるんだ」
その軽口を無視して、縄をほどきながらレイジは誘いの言葉をかける。
「俺たちの魔王が是非お前たち人間に会いたいそうだ。喜ぶぞ」
「……彼女を殺したのは、我々だぞ?そんなはずが……」
「いいから捕虜は捕虜らしく、勝者に従え」
冗談交じりにそう言って、彼女を魔王城へと運んだ。


「今回は私のせいでとんだ事に巻き込んでしまったわね。ごめんなさい」
リィディエールの予想に反して、魔王ジーナローズは人間にもいそうな線の細い美人だった。
端正な顔を歪めて嘆いている彼女に、リィディエールは申し訳なくなって謝った。
「あなたのせいではありません。私は私の意志でここにいるのです」
そして彼女はレイジの方に振り返った。
「……悪魔にもお前のような奴がいるのだな。魔王は我らを愛してくれた。ならば今度は私が魔王を愛する番だ」
その言葉にジーナローズは頬を染めて喜んだ。
復活以来見ていない、ジーナローズの心からの笑顔に、苦労したけれどこれはこれでいいと思うレイジだった。







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2015年 1月11日 莊野りず

最近多い、ジーナローズ+リィのルートを足して二で割った感じの話です。
『崇拝のカタチ』戦に触れちゃうのはご愛嬌です。
何が欲しいかと訊かれたら、姉さんなら間違いなく『人間の愛』でしょうね。
カプ的にはレイジナのつもりですが、ラストの方のリィジナでも、それはそれでアリではないでしょうか?



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