恋愛五十音のお題 色々なNLオンリーで攻略中

む 無理矢理




「くっ!」
幽葬の地下通路にルカの呻き声が漏れる。
アラギとの戦いに敗れたルカはなすすべもなくその場に立ち尽くした。
じりじりと距離を詰めるアラギ。
「何のつもりよ!?」
強気に睨むルカにアラギはにやりと笑う。


「言っただろ?俺はお前が嫌いじゃないって。むしろ好きなんだよ」
理解してもらえないのが悲しい、とばかりにアラギは首を傾げた。
どこか粘着質なものを感じてたルカは数歩後ろに下がる。
「アタシは嫌いよ!」
鞭は戦いの最中にちぎれてしまった。
安いからと即決したことを後悔しつつ、また一歩、後ろに下がる。
「……なぁに怯えてんの?冷血のルカともあろう者が」
獲物をいたぶるかのように、楽し気なアラギにはヤバい雰囲気がプンプンしている。
危険だ、早く逃げなければと本能が警告する。
しかしここで逃げたら『冷血のルカ』の名折れだ。
それにパスカのペインリングを管理していた村の者として、責任は取らなければならない。
「アタシのどこが怯えてるって?バカ言ってんじゃないよ!」
せめて自由になる手足だけでパンチや蹴りを入れるが、思った通り、大したダメージにはならない。
武器が欲しい。
鞭と無理は言わないから、せめて身を守れるような何かが欲しい。
見渡すと幽葬の地下通路から崩れ落ちたレンガがいくつか落ちている。
「ルカぁ……」
勝利を確信して近づいてくるアラギの頭にレンガの角を一発。
ドクドクと生々しい血の臭いがして、アラギはふらついた。
目に血が入りそうなところで、アラギは怒り出した。
「……手加減してれば調子に乗りやがって。上等だ」
ふらつきながらも確実にルカに近づいてくる。
ルカの背後には、もう壁しかない。
――殺られる!


とっさに目を閉じていた。
強力な一撃が来るものだとばかり思っていたが、一向に痛みはなかった。
「?」
恐る恐る目を開けると、アラギの顔が間近にあった。
そして唇に触れる唇に気づく。
「……んっ、なっ!?」
アラギに抱きしめられそうになって、ギリギリのところで彼の腕から逃れる。
「……アンタ、何を考えてんの?」
腕で距離を作り、平静を保とうとする。
だが、いくら集中しようとしてもアラギの腕の感覚が今も身体中に残っている。
「お前が拒否するからだ。逃げられると負いたくなるのが俺のサガだ」
「威張っていうことじゃないでしょ!」
そう表面上は強がっていても、怖かった。
このままでは襲われるのは時間の問題だ。
「さーて、脱いでもらおうか」
アラギはすっかりその気だ。
武器のない今では、抵抗らしい抵抗は出来そうもない。
――助けて、ザイオン!
その時、眩しい光が二人を照らした。
「はいはい、お楽しみのところすみませんねぇ。こちらはプロデヴォン教団の者でーす」
少年も姿をした天使が腹黒そうな笑みを浮かべて立っていた。
ルカは生まれて初めて天使に感謝した。





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2014年 2月28日 莊野りず

『無理矢理』というお題を見て、裏向きじゃないかと期待した方(いるのか?)、すみません。
あえてラストで方向転換してみました。でもアラルカなんて誰得?むしろ私だけ得。
ちゃっかりザイルカ要素を入れてみましたが、メインはアラギ→ルカです。



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