恋愛五十音のお題 色々なNLオンリーで攻略中

ゆ 夢物語




ファレク湖は今日も静かでのどかだ。
レイジとサファエルはこの湖が気に入っていた。
ヴィディアにはなぜか二人きりになるのを妨害されたりもするが、種族を超えた愛はゆっくりと育まれていた。


そんなのどかなファレク湖で、レイジはサファエルに尋ねる。
「サファエルは人間たちとの戦いが終わったら何をしたい?」
恋人らしい質問だとレイジは思っていた。
デートにはうってつけのロケーション。
きっとレイジさんとずっと一緒に居たい、的な答えが返ってくると思っていた。
「全世界を平和にしたいです」
サファエルはきっぱりと言った。
てっきりもっとスケールが小さい事だと思っていたのに、この強気な発言はどうだ。
「……そんなのは夢物語だ。あの人間たちが天使のお前はともかく、俺たち悪魔を受け入れると思うか?」
「夢物語なんかじゃありません!無理だというのなら、わたしが作ってみせます!」
この時は本気ではないと思っていた。
しかし彼女は実の兄であるエルラザクとも覚悟を決めて戦った。
そして魔界には平和が訪れた。


「レイジさん、お願いがあります」
戦いが終わって、デスクワークに追われていたレイジにサファエルが言った。
「ジーナローズさんの精神世界にもう一度連れて行って欲しいのです」
いきなり難しい事をあっさりと言ってのける彼女には流石のジェネラルも驚いた。
「……そんな事を急に言われてもなぁ。重要な儀式だから準備にも時間がかかるし」
「エルランサスから聞いたのです。天使たちが人間たちを滅ぼそうとしてる、と」
エルランサスとは昔からサファエルたち兄妹に使えているという天使の事だ。
「このままではジーナローズさんが愛する人間たちが滅ぼされてしまいます!新しいニュースでもないんです!だから早く!」
「わ、わかった……ギルに準備させる」
サファエルの勢いに押され、無理を言ってギルヴァイスに準備を急がせた。
レイジ以上に働いていた彼はやっとの事で準備を整えた。
「行きましょう、レイジさん!」
サファエルに半ばつれられる形でジーナローズの精神世界へと急いだ。


精神世界は相変わらず空虚で、ただ広いだけ、空も曇天。
よくこんなに暗い所にいられるものだとある意味感心する。
しばらくしてジーナローズが現れた。
「……またなの?言ったはずよ、私は人間たちに愛されない世界になど帰りたくない、と」
「姉さん、メルディエズは倒した。魔界は平和になったんだ」
レイジが重大な事を告げるが、肝心のジーナローズは上の空。
ただそう、と頷くだけ。
ここでサファエルが前に出た。
「ジーナローズさん、確かに魔界は平和になりました。でも今は人間界に天使たちが攻め込むんです。わたしたちはそれを何とか止めたいんです!ジーナローズさんは人間を愛し絵いるのではなかったのですか!?」
サファエルの言葉に、ジーナローズは目の色を変えた。
「天使が……人間界に?」
「はい」
明らかに動揺するジーナローズは結局復活することに決めたらしい。
「私が復活したら、人間たちを守ってあげて」
それを条件に。


魔王ジーナローズが復活したことにより、悪魔軍の力は増した。
人間界に攻め込もうとする天使軍をゲート前で待ち伏せ、殲滅した。
残された天使は穏健派のみ。
更にサファエルは人間たちに魔王は人間を愛していると強く訴えた。
天使の言うことならばと、人間たちは右に左にとサファエルを信仰するようになった。
魔王ジーナローズは人間たちに感謝され、彼女は大満足の結果となった。


ファレク湖で、久しぶりの休日を過ごしているとレイジはあの時の事を思い出す。
夢物語にはさせない、平和は自分が作ると言った、あのサファエルの強い瞳を。
「……夢物語、か」
ほとんどサファエルの強い意志でそれを可能にしてしまった。
今彼女は湖のほとりで水遊びをしている。
悪魔も、天使も、人間も、全てが平和に過ごせる世界。
そんな都合のいい世界を作ったのがあの若い天使だと信じる者はどれだけいようか。
レイジは笑ってサファエルに手を振って応えた。






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2015年 4月10日 莊野りず

ジーナローズ+サファエルのルートを足して二で割ったバージョンです。
サファエルとカプラせるのは最近になってからです。
書いてみると意外と書きやすい方かもしれない。








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