エロス――それは本能。
特に男なら悪魔、天使、人間問わずあるものだ。
これはそんなエロスを巡る悪魔たちのはなし。


【エロス】


魔王ジーナローズ。
彼女は魔界を統べる王であり、魔力を供給する悪魔たちの太陽。
悪魔たちの中には彼女をただの王としてではなく、美しい理想の女性だと懸想する者も多い。
女悪魔からも憧れや尊敬を一身に集める。
それほどまでに魅力的な彼女は、困ったことに実弟にも想いを寄せられている。


「ところでレイジはジーナローズ様のどこが好きなの?まだ記憶も曖昧なんでしょ?」
ある日、作戦会議の休憩中にヴィディアがうっかり口走ったことから、小さな騒動が起こる。
「何だいきなり?」
ギルヴァイスが魔界の地図から顔を上げる。
「ギルには訊いてないの。ねぇレイジ、どこが好きなの?」
彼の事をこっそり……でもないが、想っているヴィディアは少しでもレイジの理想へと近づきたい一心で尋ねたことだった。
「うーん、そうだなぁ……」
レイジの頭の中では会議の内容は吹き飛んだ。
いきなり過ぎるヴィディアの質問の答えを考えているからだ。
考え込むレイジをじっと見つめるヴィディア。
「オイオイ、そんなにジロジロ見てちゃレイジだって答えづらいだろうよ」
ギルヴァイスは半ば呆れているが、ヴィディアは本気だ。
不意にレイジの唇が動いた。
「姉さんの好きなところ……憂いを秘めた瞳、流れるような美しい髪、ドレスから零れ落ちそうな胸元、くびれたウエスト、細くて折れそうな脚……」
レイジはそう語った。
それはヴィディアが全く予想していなかった方向だ。
しかもその条件のほとんどにヴィディアは当てはまっていない。
がっくりとうなだれるヴィディア。
「そういう所にエロスを感じるんだよな。色気のない女は好みじゃないな」
レイジの結論に、ギルヴァイスも頷く。
「解るぜ。やっぱジーナローズ様は魔界一の美人だよな。……だからってジーナローズ様に懸想する同族を殺すのはやめろよ」
陽気に笑いながら言うが、その内容は悪魔らしく恐ろしい。
「昔の俺ならともかく、今の俺にそんなことできないさ」
レイジも笑って返す。
すっかり男二人でエロス談義に花が咲き、置いてけぼりのヴィディアは、葛藤する。
「……なんであたし、こんなのが好きなんだろ?」






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2014年 12月10日 莊野りず

ネタがネタなだけに、ウチのサイトでも有数の超短編になりました。
いや、上手い方はもっと書けると思うんですが、私にはこれが限界です。所詮ヘタレ(笑)。
ギャグというか、ほのぼの日常系を目指したつもりです。

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