ら、拉致監禁

サファエルが持っていたペンダントによって、彼女の居場所は天使たちに筒抜けだった。
「レイジさぁん！」
「サファエル！」
無理やり連れて行かれるサファエルを前に、何も出来ず、レイジたちは隠れ家の牢屋に捕まった。


「くっそ〜あの天使！」
ギルヴァイスが悪態をつく。
ヴィディアも無言で壁を殴っている。
その表情が……怖い。
「だからボクが殺しておけばよかったんだよー。レイジが邪魔するからこんな事になるんだ」
ユーニは忌々しそうに牢屋の天井を見上げる。
「ねぇ、この天井を吹っ飛ばしちゃダメ？」
あまりにも乱暴なユーニの提案にギルヴァアイスは慌てて止める。
「一応ここはレイジの城ですから。勘弁してください」
「つまんないのー」
囚われの身では何もすることが出来ない。
レイジはせめてサファエルだけでも無事でいて欲しいと思った。
「あそこから抜けられそうじゃないか？」
パージュが壁に一部分を指差す。
そこは構造上脆くなっている、天使たちの死角だった。
「ここにいる天使さえ倒しちゃえば、あの天使をとっちめられるのね？」
ヴィディアはサファエルに対して敵対意識丸出しでそう笑った。
「……そういうこった。けどレイジの城だからな？本気出すなよ？」
ギルヴァイスが念を押すが、ヴィディアは既に心得ているようで、近くの天使へと斬りかかった。


どうにか牢屋から脱出したレイジたちは隠れ家全体から天使達を追い出した。
これはかなり時間がかかった。
魔力の供給が止まっている悪魔と、そうではない天使なので苦戦ばかりだった。
それでも仲間たちの活躍（特にヴィディア）のおかげで一掃できた。
「それにしてもあのサファエルって天使は裏切り者だな」
ギルヴァイスは低い声で呟く。
ヴィディアも頷いてレイジの方を見る。
「そうよ！レイジは記憶がないからあっさり騙されちゃうのよ！大体天使は敵よ敵！」
「ボクも天使とは仲良くするより翼をもいで遊びたい！あの天使の翼は綺麗だったし……」
みんながサファエルを裏切り者扱いだ。
「待ってくれよ！サファエルがペンダントを持っていたのはアイツのせいじゃないだろ？」
必死のレイジの弁護も、猜疑心に蝕まれた仲間には届かない。
ヴィディアは心底悲しそうにレイジに話しかける。
「……貴方がこんな風になるなんて思ってもみなかった。ジーナローズ様だけを見ていた貴方はどこに行っちゃったの？あたしの気持ちはどうなるの？」
相手がジーナローズだから諦めたのに、というストレートな好意が感じられた。
確かに胸は痛むが、今はジーナローズではなくサファエルが先決だ。
「ヴィディアの気持ちは嬉しい。けど俺にはサファエルみたいな平和主義者の方が合うんだ」
レイジの言葉にヴィディアは泣きそうになったが、何とかこらえた。
ここで泣いてしまったらサファエルに負けを認める事になる。
それだけはご免だった。


やっとサファエルと再会することが出来た。
彼女は傷だらけのレイジに回復魔法をかけた。
「ごめんなさい、ごめんなさいレイジさん！？」
泣きながら謝るサファエルを責められない。
彼女だって監禁されていたのだから。
「これからは一緒にメルディエズを倒しに行こう」
「はい！」
仲間たちは釈然としない様子だったが、レイジはサファエルが戻ってきてくれただけで満足だった。



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２０１５年　５月２０日　莊野りず

サファエルルートで何とか攻略＞拉致監禁のお題。
いや、無理に捏造したレイジナでもよかったんですが、ヤバい方向になりそうだったので没。
ユーニをもっと目立たせたいと思う今日この頃。






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