恋愛五十音のお題 色々なNLオンリーで攻略中

り、理性の限界




今日のアベルはどこかが違った。
インセストたちには比較的優しいし、当然レアにも優しい。
しかしどこか寄って欲しくないような態度を取っている。
何かしたか、それとも何かがあったのか。
それを知るすべは、レアにはない。


今日も今日とて教団に乗り込むアベル。
それはいつもの事だが、最近はその頻度が多い。
前までは二週間に一度程度だったのに、今ではほぼ毎日教団に乗り込んでいく。
同胞のインセストが助かるのは嬉しいし、仲間が増えるのもにぎやかで楽しい。
でもこれほど頻繁に乗り込んで体調を崩したりはしないのだろうか。
そんなある日、拳が壊れるほどの怪我を負ってアベルが帰ってきた。


「どうしたのです?最近どこか変ですよ」
アベルの手に丁寧に包帯を巻きながら、レアは尋ねた。
「……」
彼はバツの悪そうな顔をしてむっつり黙り込んだ。
こうなったらテコでも意志を変えないのがアベルだ。
「……心配なんです、貴方の事が。おそばに使える従者なら主の体調管理も仕事のうちです」
レアがわざと真面目ぶって言うと思惑通りアベルの口が開いた。
「……理性の限界が近いんだ」
悪魔の理性の限界――それを聞いたレアはある事に思い至った。
「……まさか」
一番信じたくないのはレア自身だった。
まさかアベルが……そんなわけがない。
それでも頭をもたげた疑惑はじわじわと広がっていった。
「ああ、渇き、かもしれない」
そう言ったアベルは自嘲気味に笑った。
ただ驚くしかないレアだが、包帯を巻いている最中の手に目をやった。
「……大丈夫ですよ」
「なぜそんな事が言える?オレはいつかお前をも襲うかもしれないんだぞ!?」
レアは微笑んだ。
「……だってこの傷、ギリギリのところで手加減したんでしょうね、拳は無事です」
包帯を巻き終えたレアは処置完了とばかりにピンで包帯の端と端を留めた。
「無意識のうちに手加減をしている、これは貴方の理性が残っている証拠です。ほら、渇きではないでしょう?」
そう言われればそうだ。
悪魔の『渇き』は血に狂うもの、理性でセーブなど出来るはずもない。
少し得意げに笑うレアの笑顔に救われた気がするアベルだった。




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2015年 5月20日 莊野りず

また短いな!少しは長文書けるようになってきたと思ったら、すぐこれだ。
どうしても長くならないんですよ。
どなたか長文書ける方、ぜひコツをご教授くだ去ると嬉しいです。




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