恋愛五十音のお題 色々なNLオンリーで攻略中

れ、冷戦




「ねぇレイジ、これで頭を叩いたら記憶も戻ると思うの」
そう言って彼女が持ち上げたのは粉砕鉄球。
「バーカ!そんなんで簡単に戻るかよ。それよりレイジ、この薬、フォレスター様の本に載ってた薬なんだが……飲んでみないか?」
ギルヴァイスはギルヴァイスで怪しげな真紅の液体をしきりにレイジに勧める。
――どっちも勘弁してくれ!
レイジは心の中でそう叫んだ。


「なによ!そんな怪しい薬でレイジの記憶が戻るわけないでしょ?バカはそっちよ!」
「なんだと?バカにバカ呼ばわりされる筋合いねーよ。なぁレイジ、一口でもいいから」
「ダメよ、そんな怪しいの!」
「粉砕鉄球なんてモロ凶器を見せてニヤついてる奴に妖しい呼ばわりされる筋合いはないな」
二人はレイジの記憶を元に戻そうと、やや必死すぎている。
「……やめろよ二人とも」
レイジは止めるが、原因はレイジなので、結果は火に油を注ぐだけ。
「レイジは黙ってて」
「レイジは黙ってろ」
二人同時にそう言われては何も言えない。
いつの間にかヴィディアとギルヴァイスは冷戦状態に突入していた。


「――よ!」
「――だ!」
今日も今日とてレイジを間に挟んだ冷戦は止まらない。
いい加減にやめればいいのに、どうやらこの二人の幼馴染というのは喧嘩は日常茶飯事らしい。
昔からこうだったのか聞いてみたい気もするが、また絡まれるのもご免だ。
「あ、ところで明日はユーニ?の城に行ってみようと思うんだ」
レイジのその一言で二人の口喧嘩はぴたりと止んだ。
「悪い事は言わないわ。やめておきましょう」
「ヴィディアの言う通りだ。癪だがやめよう」
二人の反応から見るに、かなり強い悪魔らしい。
「それなら尚更な髪に引き込むべきだ。決めた、ユーニの城に行くぞ」
しかし翌日、彼の居城を訪ねても、侍女たちが数名いるだけだった。
レイジはがっかりしたが、他の二人はどこかホッとした様子だ。


傷病者キャンプでユーニと再会した時、二人がなぜあれだけは反対した理由はすぐに解った。
可愛らしい見た目に反して残虐なのだ。
「キミの翼ってかっこいいね」
そう笑顔でギルヴァイスの翼にご執心。
当然怯えるギルヴァイスと、それを庇うヴィディア。
その事に感動したらしいギルヴァイスはヴィディアに深く感謝した。


こうして冷戦は終わったものの、未だに口喧嘩が絶えることはない。
それでも今のこの時間の暇つぶし程度には楽しいと思えるレイジだった。





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2015年 6月10日 莊野りず

ギルヴィ目指してみました。幼馴染萌え的には書いてみたかったカプです。
思ったよりアホな展開になってしまった。
記憶喪失時レイジはこの二人(+ユーニ)に振り回されてるのが好きです。





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