恋愛五十音のお題 色々なNLオンリーで攻略中

ん、「ん…っ」(ヴィディア→レイジ→ジーナローズ)




「俺の声に応えてくれ!ジーナローズ!」
レイジが覚醒の間からジーナローズの精神世界に飛んだ。
その様子を誰よりも心配していたのはヴィディアだった。


レイジがジーナローズの精神世界へ向かってから数時間が過ぎた。
「ねぇ、やっぱり遅すぎるわよ」
ヴィディアは傍らのギルヴァイスにそう言ったが、彼は部下から受け取った書類を読むので手一杯だった。
「ん、ああ、そうだな」
当然返事も空返事。
「ちょっと、ちゃんと聞いてるの?レイジが戻ってこなかったら……」
「ああ、大丈夫。ちゃんと聞いてるから」
「全然聞いてないでしょ!」
全く心配する様子の見えないギルヴァイスに腹を立てていると、ユーニがレイジの傍に寄っているのを見かけた。
なんだ、心配してるのは自分だけではないではないか。
安心して彼の元へ駆け寄ると、ユーニはレイジの翼を見ていた。
「あ、キミもレイジの翼狙ってるの?でもダメだよ?これはボクが貰うから」
「いっ、いえいえいえ、ダメですよっ!いくらユーニ様でも、レイジの翼は渡しません!」
慌てて止めに入るとユーニは心底落ち込んだ顔でヴィディアを見た。
うっすら涙さえ受けべているが、これはきっと彼の同情を引こうとする罠だ。
「……どうしても、ダメ?」
目をウルウルさせているユーニは少女のように愛らしかったが、ヴィディアはきっぱり言ってやった。
「絶対に、ダメです!」
「ちぇっ、ケチ!」
ユーニは素早く涙を引っ込めて、魔王城の徘徊に向かった。


「どいつもこいつも……本気でレイジを心配してる人なんていないんじゃないの?」
そうぶつくさ呟きながら、彼の身体に何かあってはいけないと覚醒の間でレイジの帰りを待っていると、パージュが近寄ってきた。
彼女ならば大丈夫だろう。
「パージュ様もレイジのことが……」
「ああ、心配だよ」
ようやくまともに心配してくれる者がいたことにヴィディアは喜んだ。
しかし彼女の口をついて出たのは――。
「ジェネラルがジーナローズ様の復活に失敗したら、一発きついのをお見舞いしてやろうと思ってね」
そう邪悪な笑みを浮かべるパージュの手には、殴られたら確実に気絶するであろう、ラピッズロッドがしっかりと握られていた。
「パージュ様、どうか落ち着いてください」
ヴィディアは宥めるが、パージュはアンジェラを抱きしめたままで、とんでもない事を言いだした。
「どこで聞いたか覚えてないんだけどさ、眠っている奴を起こすにはキスが一番だとか聞いたことがあるよ」
「きっ、キスぅ!?」
アンタもジェネラルが心配ならそれくらいしてみれば、とパージュは言い残し、覚醒の間を去った。


かくして、覚醒の間にはヴィディアとレイジの空の身体だけが残された。
――あたし、レイジには無事に戻ってきてほしい。
ヴィディアの中でキスしてしまえと囁くものと、ダメだと断固反対するものがぐるぐる回る。
いい、悪い、いい、悪い、いい、悪い、いい、悪い――。
「え〜い!もう知らないんだから!」
ヴィディアは思い切って眠ったままのレイジの唇を奪った。
「ん……っ」
キスで唇がつながったまま、レイジの小さな声がヴィディアの耳にはしっかり聞こえた。
勢いよく唇を離すと、レイジの目が開いた。
「レイジ!」
思わず抱き付くヴィディア、しばらく何が何だかわからないレイジ。
「……なんか唇に柔らかい感覚があったような気がする」
その一言でヴィディアは赤面。
「きっ、気のせいよ!……それより、ジーナローズ様は?」
黙って首を横に振るレイジ。
「……そっか。でも何とかなるよ!頑張ろうね!」
キスしたことを誤魔化そうと無駄に明るいヴィディア。
レイジはそんな彼女を不審な目で見ていたが、すぐにそうだなと同意した。







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2015年 8月4日 莊野りず

前半の勝手な面々を書くのが楽しかったです。
ギルは結構放置主義で、ヴィディアが過保護だと思うんですがどうなんでしょう?
例によってカルテットの中でフォレスターだけいません。
彼はボケないので扱いに困るんです。




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