「マティア!?」
教会の牢獄でマティアは囚われていた。
「カイン!?」
マティアはカインがここへ来るとは思ってもいなかったのだろう。
久しぶりに会ったマティアは少しやつれて見えた。
二人がせっかく再会できたというのに、僧兵たちが大勢押し寄せてくる。
「カイン、ここは逃げて」
「でっ、でも……」
仲間たちがカインを呼んでいる。
このままでは仲間を巻き込んで捕まってしまう。
「これを持って行って!」
鉄格子の隙間からマティアが差し出したのは、ペインリングだった。
「カイン!もう持たない!引くぞ!」
エクサルの大声が聞こえる。
「マティア、必ず助けに来るから!」
カインがそう告げると、マティアは待ってると微笑んだ。


【可能性がある限り】


レッドムフロンによって重傷を負わされたカインだが、アベルが助けてくれた事で、再び戦闘に加わった。
「なぜだ!?なぜ動ける!?」
レッドムフロンは不思議がりながらも、グリシナの仇を取ろうとペインキラーを召還した。
「マズイ!ペインキラーだ!」
エクサルが数歩下がる。
そこへ灰色の翼の青年が走ってきた。
「少年!君も持っているのだろう、ペインリングを?その力を引き出すんだ!」
見たことのない男だったが、エクサルは嬉しそうにその名を叫んだ。
「ヴァルトス様!」
彼がサイファーパンクのリーダーかと少し意外に思っていると、再び彼は叫ぶ。
「いいからペインリングの力を信じて祈るんだ!」
カインはマティアから受け取ったペインリングを空高く掲げる。
「ペインリングよ、ボクに力を!」
叫び、強く祈った途端、リングは光を帯びた。
真紅の、しかしどこか懐かしい色。
マティアの歌を聴いているような、そんな懐かしい気分にさせた。
次の瞬間、カインの召喚したペインキラーはレッドムフロンのモノを打ち消していた。
「すげー……」
エクサルの感嘆の声。
カインが召喚したモノは大きな翼のついた女性のようなシルエットだった。
「なんだと?あんなものを奴はどこで……」
呆気にとられているレッドムフロンは、そのペインキラー――ティアーによって葬られた。


サイファーパンクの本部に案内されたカインたちは、その組織の仕組みや主義についてヴァルトスから聞いた。
最終的にカインたちは見習いとして扱われる事になった。
「良かったじゃん。これで俺ら仲間だ!」
嬉しそうなエクサルをよそに、カインはあの時のティアーについて考えていた。
自分のような弱い者でもペインキラーがついていれば恐れる者は何もない。,br> その考えを見抜いたのか、ヴァルトスはカインをこう諭す。
「いくら強力なペインキラーでも、使い方を間違えてはそれはただの野蛮な力にすぎない。覚えておくといい」
「……貴方は、ヨハネみたいなことを言いますね」
自分を庇って多分もう助からないヨハネを思い出して、カインは少しだけ笑った。


マティアと再会したのはそれから紆余曲折あった後の事だった。
ルカは戦線から遺脱し、教団の二人が仲間に加わってから。
その後も色々あった。
「……マティア、迎えに来たんだよ。一緒にキボートスに帰ろう」
カインが手を差し伸べても、マティアはそれを取らない。
「マティア?」
「貴方はわたしが待っていたカインじゃない」,br> マティアは悲しそうに翼を広げた。
「マティア、ちょっと待ってよ!ボクはあの頃のボクじゃないんだよ!強くなったんだ!」
「貴方は強さを手に入れた代わりに何かを失ってしまった。それはわたしのせい。お願いだから追わないで」
そう泣きながら言って、マティアはあっという間に遠くへ消えた。
「……そんな」
カインは今までの戦いが無駄だったのかと自分に問うた。
いくら考えても今までの苦しい道のりはマティア救出のためだったはずだ。
「……カイン」
エクサルたちがカインの傍に寄る。
「……ボク、決めた。マティアを追うよ。ボク一人で」
それを聞いた一同は驚くしかなかった。
「一人でって……いくら何でも無茶だ」
「いくらお前が十神将レベルに強いからと言っても……」
カインは何も言わず、背中の白い翼を広げた。
「ボクにはマティアのくれたこのペインイングと、これまでの冒険で手に入れた強さがある。……可能性がある限り、マティアを諦めたくないんだ」
そのカインの口調はどこか大人びていて、誰一人それ以上の事は言えなかった。
「待ってて、マティア。今行くから!」
そう言って仲間が見守る中、カインは大空へと飛び出した。






________________________________________
2014年 12月12日 莊野りず

当サイトでは珍しい……というか、書いてる方をほとんど見かけない、カイン→マティアでした。
公式でくっついてるから二次創作の意欲がなくなるのかな。
どうしても暗い系のラストになるのは私の悪い癖です。



B/Mトップに戻る
inserted by FC2 system