いつも通り、ジーナローズの謁見の時間が始まる。
レイジはギルヴァイス、ヴィディアと共に彼女の護衛として傍に控える。
――どうなっているんだ。
彼に芽生えた好奇心がちょっとした騒ぎの発端だった。


【衣擦れ】


謁見が終わり、ジーナローズはヴィディアっを伴って謁見の間を退出していく。
残されたレイジは、同じく後始末で残っていたギルヴァイスにそっと耳打ちをする。
「……姉さんのあのドレスってどうなってるんだ?」
「はぁ?ジーナローズ様のドレスがどうしたって?」
レイジはなぜ自分の言いたいことも察せないのだろうとため息をつく。
「だから、あのドレスだよ。なぜずり落ちて胸がポロリとしないのか、不思議に思わないのか?」
これにはギルヴァイスもすっかり呆れてしまった。
天下のジェネラルがこんなくだらない事に真剣になるだなんて。
呆れていることに気づかないのか、レイジは無理矢理ギルヴァイスの肩を掴み、更衣室の前まで進んでいく。
「ちょ、待てよ!オレまだ片付けも済んでないし、第一お前がやろうとしてる事は覗きだぞ?」
「お前の都合なんて知ったこっちゃないんだ。俺はただ、姉さんのドレスの秘密が知りたいんだ!決していやらしい意味で覗くわけじゃないんだ!」
あ〜あ〜自分から覗きって言っちゃったよ、とギルヴァイスは観念した。
ジーナローズ関連のレイジの暴走は凄まじい。
「……ちょうど着替え始めたみたいだ。どれどれ……」


「ホント、ジーナローズ様って素敵なプロポーションですよね!羨ましい!」
ヴィディアが大剣を背中から外しながら、ドレスを脱ぐジーナローズをじっくり眺めた。
胸の大きさは同じくらいだが、普段戦わないためか、お腹のあたりの柔らかさが違う。
それでもスリムな体型で羨ましい。
「そんな事はないわ。パージュが羨ましいのよ」
ジーナローズは首飾りを外しながら、部屋着のドレスを探す。
たまたま魔王城にパージュが遊びに来ていたため、矛先は彼女に変わる。
「またまた……ジーナローズ様が一番バランスのいい体型ですよ。あたしなんか胸ばっか大きくて邪魔でしょうがないし」
本気で邪魔そうに服のチャックを無理やり絞める。
「でも大きい胸って羨ましい……」


そこまでの会話を聞いていたレイジはますます覗きたくなった。
今までそうしなかったのはギルヴァイスが何とか抑え込んでいたからだ。
衣擦れの音がレイジの煩悩を刺激する。
「……もう我慢がならん。俺はこの先に行くぞ。待ってろ姉さん……」
こっそり覗くつもりが、ギルヴァイスに抑え込まれていた反動で、勢いよく扉にぶつかる。
「……あ」
レイジの目の前には着替え中の女性陣の姿があった。
ジーナローズはただ目をぱちくりさせている。
着替え終えていたとはいえ、魔王の弟ともあろう者が覗きなど、到底許されるものではないらしい。
「……ギル、そこにいるんでしょ?怒らないから素直に出てきて、ね?」
ヴィディアの低い声に、ギルヴァイスは渋々更衣室に入ってきた。
「あたしらの着替えを覗こうとするなんていい度胸じゃないか」
ちょうど魔力も満ちてるし、等とスクィーズを繰り出す気満々のパージュと、傍らの大剣を握るヴィディア。
男二人は戦慄した。
ジーナローズは散々な目に遭う二人を苦笑いで見つめていた。







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2014年 月日 莊野りず

ジーナローズ様のあのドレスってどうなってるの?という疑問から生まれた話です。
まさか覗きにまで発展するとは我ながら思っていなかったけど(笑)。
レイジもギルも一応成人男子だろうし、覗きくらいはあってもいいんじゃないでしょうか。
一応女性の敵なのでヴィディアとパージュにシメていただきました。



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