喫茶店から出る時、アキラはリンに対して警戒しているようだった。
それも当然だろう。
自分でもあれだけの殺気が出るとは思わなかったから。


【星に願いを・7】


アルビトロの城からケイスケが出てきた。
見ているこちらが参りそうな顔でやっとの事で出てきたようだった。
リンの軽口にも乗ってこない。
ケイスケにも解ったのだろう、このゲームの異常さが。
「でも一応俺、訓練学校卒だから……」
大丈夫という言葉が、その次に続くはずなのだろうが、残念ながらそれはなかった。
それだけ不安という事だろう。
もしケイスケがBl@sterに参加していたとしても、人を殴れるかどうかすら怪しい。


ホテルに戻ると、写真の現像は終わっていた。
機能新しく撮った、アキラ達とともに写っている写真も上出来だ。
それとついでに水とソリドの補給もした。
食べるものも食べないと力が出ない。
リンは不摂生していそうなアキラ達に半分あげた。
カズイと似ているから、という理由もあるが、何となく世話を焼きたい気分にさせられてつい親切にしてしまう。
それにブタタグは余るだけ持っている。
ケイスケは律儀に礼を言ったが、アキラは不信感丸出しだった。
そんなアキラが可愛いと思える。
だが平穏は長くは続かなかった。
アキラがケイスケに対して切れてしまったのだ。
リンはフォローしたが、アキラは聴く耳を持たなかった。
――何だか苛々する。
その理由は解らない。
ただ昔の、カズイの忠告を聴こうとしなかった自分の姿が蘇ってきて嫌なのだ。
気分を紛らわすかのように、一緒に写真を見ようと提案した。
アキラも言いすぎたと思ったのか素直に話に耳を傾けた。


それからリンは自分がアジトにしているビルの場所を教えた。
快晴の日ならば夜には美しい星が見られるのだ。
そこでしばらくアキラと話をし、それから別れた。
ケイスケの様子がおかしいから、それを探るという。
リンとしては寂しいが、きっとこの距離がアキラにとって丁度いいと思って素直に離れた。


雨の日。
リンはどこに行こうかなど一切考えずにトシマを彷徨っていた。
その途中で見つけたのだ、アキラを。
リンは目を細めた。
アキラの首にかかっているのはJ。
そして手に持っているのはAだった。
それにアキラには後一枚Jがあったはずだ。
「くくっ、あはははは」
笑いがこみ上げてくる。
――なんだ、俺が捜し求めていたものがこんなにも近くにあったんじゃないか。
リンはスティレットを構えると、アキラに向って飛び込んでいった。













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2012年 8月4日 荘野りず

一気に本心を表すリン。
この辺のバトルはリンルートプレイ済みの方には不要ですよね。


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