王戦――それはリンが待ち望んでいた一戦だ。
そのためだけにわざわざリンはトシマまで来たのだから。


【星に願いを・9】


トモユキは急いでいた。
あのリンの事だ、無理に身体を動かしてでもコロシアムに来るだろう。
城の門を潜り、アルビトロを呼ぶ。
警備員は不審そうにトモユキを見た。
いや、実際不審だろう。
イグラに参加しているチンピラで、元とはいえ有名チーム・ペスカコシカの服を着ている。
しかも真夜中の訪問だ。
アルビトロが眠そうに目を擦りながら現れた。
趣味の悪い揃いの柄のナイトキャップとネグりジェ
。普段は痛んだカールのかかった金髪が行儀悪くナイトキャップからはみ出している。
そしていつものヒステリックな声でこう言う。
「なんだね君は。真夜中の訪問など――」
しかしトモユキは口を挟んだ。
「いい話がある。王戦の余興だ」
ピクリとアルビトロの眉が跳ねる。
「王戦の余興?何だそれは」
「アンタも楽しめると思うぜ。退屈してんだろう?」
アルビトロは考え込んだ後こう言った。
「なるほど、自分と友情どちらを取るか、か」


アキラが目覚めた時、既にリンは部屋からいなかった。
ジャケットのポケットを調べてみると案の定タグがごっそりと消えていた。
城へ行ってみると、リンが王戦に参加する事を告げられた。
リンが王に挑むなど自殺行為だ。
アキラはリンを止めるため、アルビトロからの条件を飲んだ。


王の正体はシキだった。
シキがリンの兄で、無敗の王者。
驚くと同時に、どこかで納得した。
リンの身体能力は普通より数段は優れている。
きっとリンがシキの歳くらいになれば相当強いだろう。
リンは認めようとはしないだろうが。
源泉が起こした爆発から逃れながら、そんな事を思った。


源泉が脱出の準備をするといって出て行った後、リンは目を覚ました。
しばらくは激昂していたが、アキラと話をするうちに素直になった。
そして……暗い部屋の中で、した。
リンは妖艶でほぼ押されていたがアキラが主導権を握ろうとすると、無理に自分の中をこじ開けた。
呆然として見とれていると誘われたのでそれに応えた。
リンは満足げに笑うといつも通りにマイペースに眠った。
アキラも初めての事で疲れていたので、そのままリンの横で眠りについた。


リンは決着をつけると言って出て行ってしまった。
必ず帰ってくるという言葉を残して。
アキラはそれを信じ、源泉と一緒に日興連側に渡った。











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2012年 8月30日 荘野りず

トモユキが王戦で暗躍。
トモリンはここまでです。
次はラストのアキリン予定です。


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