横恋慕10のお題 トモリンで攻略

1、失恋を知った日


多分、初めて男を好きになった。
いや、そもそも人を好きになったのも初めてかもしれない。
なのに……こんなのってなよな。


 今日もペスカ・コシカは絶好調だ。
 相手チームをバラバラにして、一人一人恐怖を味わわせてやる。
するとどれだけ吠えていた相手でも手のひらを返すように泣き喚いた。
それが楽しくてペスカ・コシカにいると言っても過言ではない。
うちのチームの人数は二十人。
 対して相手チームはたったの三人。
 本気を出すまでもない――誰もがそう思うだろう。
 敢えてそうしないのが俺たちペスカ・コシカと他の雑魚チームとの違いだ。
ペスカ・コシカはやると決めたら徹底的にやる。
これは頭であるリンの方針だ。
チームの誰もがリンを畏怖と尊敬のまなざしで見ていた。
 一部の例外を除いては。


 敵対したチームには報復を行う。
これもリンが決めた事だ。
 勿論誰も反対などしない。
そのはずなのに、一人だけ報復に参加しないヤツがいる。
ナンバー2のカズイだ。
 今日も報復に行く時リンに誘われても、気をつけてなと一言言ったきりついて来なかった。
それが気に入らないヤツだって当然いる。
 俺もそうだ。
 「なあリン。何でカズイは報復には参加しないんだ?」
 「さあ。知らねーよ」
リンはいつもより機嫌が悪かった。
 「カズイのヤツは来なくていいのか?
 「数は十分足りてるだろ。強制はしたくない」
ぶっきらぼうに答えたリンは、自分でも妙な気分なのだろう。
 落ち着かない。
その鬱憤を晴らすかのように、今日のリンはいつもより冷酷に相手をいたぶった。
 仲間の中には引いてるヤツもいた。
それでも報復が終わると溜まり場に戻り、いつものように安酒を飲んだ。
いつもと同じはずなのに今日の酒は不味く感じられた。


 夜が明けると、俺はリンの部屋のベッドで眠っていた。
 昨日は飲み始めたのが遅かったから、明け方からの記憶が危うい。
リンの姿を探しても、どこにも見当たらない。
 「リン……」
 部屋のドアを開けて短い廊下に出ると、隣の部屋からリンの声が聞こえた。
この溜まり場には大勢でた屯せる大広間とそこに通じるこの廊下、そして個室が二部屋しかない。
 一つはリンが使っていて、もう一つはカズイが使っている。
 今出てきたのがリンの部屋だからカズイの部屋にいるのは――。
 「今起きたのか」
やはりカズイだった。
 「お前昨日は凄かったんだぞ」
リンが笑顔で顔を出した。
 久しぶりだったので、少しどきりとした。
だが。
 「何でリンがカズイの部屋にいるんだよ」
 「それは……」
 言いづらそうにリンは説明しようとした。
 「トモユキがおかしくなったそうだ」
カズイが変わりに説明した。
 「はあ?」
 「だから、お前がリンの事を好きだって言い出したんだそうだ」 無意識のうちにそんな事したのか、俺。
 「だからカズイならそんな心配はないし、一緒に寝たんだ」
 「一緒に寝たー?」
 「別に何もないだろ。男同士だし、俺にその気はないし」
 「無問題〜」
リンはカズイの腕に抱きついている。
……絶対カズイは気づいてる。
でもリンが選んだ相手だ。
 今日は初めて失恋を知った日だ。

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 2012年 7月1日 荘野りず

 お題にあわせるのが結構きつかった話。
リンはこの頃からカズイが好きな自分の事を自覚してたのかどうなのか。
 個人的には自覚して、一人でもやもやしてると可愛いと思います。
でもリンは男前。これは重要。



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