横恋慕10のお題 トモリンで攻略

2、望みがどんなに薄くても


ペスカ・コシカの溜まり場はいつも盛況だった。
トモユキはその合間をすり抜けるようにしてリンに近付いていく。


リンはつれなかった。
トモユキがどんなに話しかけてもどこ吹く風だ。
だがカズイを見かけると、その表情が変わるのが解る。
――なんでカズイなんだ。
トモユキは内心悪態をつく。
カズイとリンは仲良く話してる――ように見える。
リンの態度はつっけんどんだったが、トモユキには解る。
あの顔は喜んでいる顔だ。
カズイは自分の知っている星の知識をリンに話して聞かせている。
リンは興味深そうに頷いている。
これでは二人の間に入り込む隙などないではないか。
 他のメンバーが空気を読まずに、二人の間に入り込もうとした時にはリンに睨まれている。
……これでは望みなどないではないか。


リンとカズイがそれぞれの部屋に戻っていくと、トモユキは仲間に相談した。
いや、相談というより雑談だ。
 「なあ、リンのヤツカズイと親しすぎじゃね?」
トモユキがそう言うと、仲間は笑って答えた。
 「トモユキ〜リンに嫉妬か?」
 疑いがあらぬほうへと向かったので、トモユキは慌てて言葉を追加する。
 「いや、そうじゃなくて。つかなんで俺がリンに嫉妬なんかするんだよ」
すかさず仲間が言葉を返す。
 「じゃあお前、カズイに嫉妬?つーかホモ?」
からかうように言われたので、トモユキは腹が立った。
 「ホモじゃねーよ。ただペスカ・コシカの頭が特定の誰かと親しすぎるってのは問題だと思ってよ」
 口をついて出たのはリンへの想いの否定の言葉だった。
 自分でも驚くほどにそれは胸が痛んだ。
 仲間達は確かに、とでもいいたそうな表情で頷いている。
 「確かにリンはカズイに甘いよな」
 「いつでもべったりだもんな」
 「リンって可愛い顔してアッチの方は凄かったりして」
 最後にリンのことをからかわれたので、トモユキは蹴りを入れた。
 「勝手な事言ってんじゃねーよ!」
リンを侮辱するヤツは俺が許さない、とばかりにトモユキは怒っていた。
 自分でも驚いた。
 「いてて……、トモユキ何カリカリしてんだよ」
 「してねーよ」
それだけ言って、トモユキはその場を去った。


リンの部屋の前。
トモユキは自分でも抑えきれない感情を抱えたままそこにいた。
なぜこんな時にリンの部屋にきてしまったのかと不思議に思う。
 「……リン、いるか?」
しばらくして、部屋の主から返事があった。
 「何?その声はトモユキか?」
 「ああ」
リンは眠っていたらしく、髪がところどころはねていた。
リンは長いあくびをすると口を開いた。
 「で?何の用?俺、眠いんだけど」
トモユキは意を決するとリンに訊いた。
 「お前が好きなのはカズイなのか?」
 「は?」
リンが間の抜けた声を出す。
それから覚醒してきたのか、はっきりと言った。
 「ああ。俺はカズイが好きだ」
――やっぱりか。
でも、それでも、一パーセントでも可能性があるのなら。
 「俺は望みがどんなに薄くても、お前を諦めない」
その言葉にリンが挑発的に笑った。

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 2012年 12月17日 荘野りず

 トモユキはしつこいタイプだと思います。
そしてリンはカズイ以外の前だとはっきり言えるのに、本人を前にすると言えなくなるタイプだと思います。



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