横恋慕10のお題 トモリンで攻略

4、もしかして嫌われた?


最近リンの態度がそっけない。
 嫌われそうな要素は山ほど思いつくが、それでリンに冷たく扱われているとは思いづらかった。


 「カズイ!」
Bl@sterで勝利した夜、酒に酔ったリンはカズイに甘えていた。
カズイもそんなのは慣れているので適当にあしらっている。
 「全くリンは。お前がチームの頭だってコト自覚しろよ」
そういいながらも、カズイの手はやれやれとでも言うようにリンの頭を撫でていた。
その光景にいらだつ。
どうしてカズイなのだろう。
もう何度も考えた事だ。
 自分にもカズイ並みには包容力があると自負している。
なにせ本堂グループの次男だ。
なのになぜリンはトモユキを頼ってくれないのだろう。


 次の一戦でリンが怪我を負った。
 本人はなんでもないと言っているが、よく見ると化膿している。
 早く消毒しなければ。
ここでもカズイはトモユキよりも素早く処置を施した。
 「リン、大丈夫か?」
 少し遠慮がちに訊ねると視線だけで返された。
――大丈夫。お前が心配する事なんて何もない。
その視線が冷たかった。
リンはカズイには甘えるのに、トモユキにはそうしない。
じれったかった。
もっと頼りにして欲しい。
なのにこの雄猫はカズイ以外には懐かない。
むなしさを感じて、その場は引き下がった。


トモユキがリンに無視され始めて二週間。
その間も喧嘩に明け暮れた。
その日は祝賀会だった。
リンの怪我も順調に治っている。
トモユキとしてはそろそろ色々と限界だった。
リンの声が聞きたい、リンの笑顔が見たい。
しかしそれは叶わない。
もしかして嫌われたか?
トモユキがその結論に辿り着いたときにはリンの隣にはいつものようにカズイがいた。
 「……何でリンはお前ばっかり」
 「本人に聞いたらどうだ」
カズイは自分のペースを崩そうとしない。
そのすました顔が気に入らなかった。
 「リンは随分お前にご執心なんだな」
いやみのつもりで言ってやった。
するとカズイは涼しい顔を崩しもせずに答えた。
 「そうだな。俺はなんだかリンの保護者みたいだな」
 「じゃあその保護者に訊く。何でリンは俺を避けてるんだ?」
 酒が入っているせいか、ろれつが回らない。
 「……覚えてないのか」
 呆れたように呟かれ、内心腹が立った。
だがリンの機嫌をよく知るカズイの言葉は縋るべきものだ。
 「……何を?」
カズイはわざとらしく溜め息をつくと言った。
 「リンが楽しみにしてたアイツの誕生年のワインを、お前一気飲みに使っただろう」
 「あ」
そういえば、あの時は気分が最高潮で、周りに煽られたトモユキはワインを一気飲みしたのだった。
リンが愉しみに取っておいたとは知らずに。
 「……俺、謝って許してもらえると思うか?」
それに対するカズイの返答は冷たかった。
 「さあな」
たかがワイン。
されどワイン。
トモユキが許してもらえたのは顔をボコボコにされてからの話である。

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 2012年 10月26日 荘野りず

私の書く話って酒の登場率が高い気がします。
 便利です、お酒。
それはわたしがただ単にのんべえだからかもしれません。



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