横恋慕10のお題 トモリンで攻略

8、そんなにあいつがいいのか


ずっと邪魔だと思っていたやつが死んだ。
 勿論死んで欲しいなんて思ったこともない。


 荒くれ者の街、トシマ。
トモユキは生き残ったチームの連中と一緒にこの街に来た。
 特に目的があったわけでもないが、王には純粋に興味があった。
それにBl@sterでは殺人は不可だ。
リンが慌ててチームを抜けてしまったし、生き残り組には娯楽がなくなってしまった。
そんなわけで、今日もトモユキは仲間数人と街を歩く。


 旧ペスカ・コシカのシマは広い公園だった。
ここなら見晴らしもいいし、遊具の中などで雨もしのげる。
 下手にビルなどねぐらに選んでは、いつ襲われるか解らない。
 未だに時々思い出す、リンのことを。
なぜあの場にいた?
なぜお前だけ助かった?
なぜ弁解もしない?
 疑問符ばかりが頭の中を駆ける。
それに――。
 「シキだー。逃げろー」
 『シキ』と言う単語に自分の中の何かが反応した。
そう、それになぜリンはシキを追っているのだろう。
 映画館でアキラという男を連れたリンに会ったときも、リンはシキに反応した。
なぜリンはトシマ一の危険な男を追うのだろう?


 「……アンタ、アキラだろ?」
クラブで一人でいたアキラに、トモユキは興味深そうに話しかけた。
やはり似ている。
 「アンタはトモユキ、だろ?」
いきなり話しかけられて困惑しているのかアキラは注意深くトモユキを見返した。
グラスの中の氷がカランと鳴る。
 「リンに随分懐かれてるじゃないか。でもそれはお前がカズイに似てるからなんだよ」
トモユキの瞳が挑発的に細められる。
 「前に聞いた。でも、だからなんだ?」
 話の核心に触れそうもないので、アキラはここで帰る事にした。
バカバカしい。
クラブのドアがカラカラと鳴って、開いた。


 「なんでだよ、リン」
アキラに帰られたトモユキは一人で飲んでいた。
カズイはアキラと違って優しかった。
それに頭も良かった。
 自分が短気なせいでよく喧嘩もしたが、力いっぱいとまではいかなかった。
 「……そんなにあいつがいいのかよ」
トモユキは暗い目で立ち上がった。

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 2012年 12月19日 荘野りず

暗めのトモユキ→リン→アキラです。
トモユキみたいな普通に近いキャラって書きやすいのか書きずらいのかわからないです。



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