横恋慕10のお題 トモリンで攻略

9、…期待させるな!


「トモユキ!ちょっと付き合えよ!」
そう言ってリンはトモユキの方に缶コーヒーを投げてよこした。


 「カズイは?」
 缶コーヒーを受け取ったトモユキがリンに訊いた。
いつもならカズイの方に行くのに珍しい。
リンは自分の缶コーヒを一口飲んで、さあ?とだけ言った。
これは本格的におかしい。
そもそもリンがトモユキに奢るなって事も滅多にない。
 「……カズイと何かあったのか?」
 「別に。ただ俺がトモユキといたい気分だからここにいるってだけ」
その言葉に内心トモユキは小躍りした。
いつもリンに気持ちを伝えようとしても、はぐらかされてばかりなのだ。
これはチャンスだ。
コーヒを飲むリンの横顔を眺めながらトモユキは思った。


 翌日。
トモユキが完全に目を覚ました時には、リンはもうどこかへ出かけていた。
リンが早起きなど珍しい事もあるものだ。
 昨日といい今日といい、何かがおかしい。
 「そうか。カズイがいないんだ」
 思えば三日ほど前からカズイの姿を見た覚えがない。
 「……まさか」
 嫌な予感がする。
トモユキは飛び起きると、仲間達にリンの居場所を訊いた。


 「カズイはいたのか」
リンがいたのは溜まり場の傍の廃ビルだった。
 夜になるとリンはよくここに来て星を見ている。
 「なんで俺がここにいるって解ったんだ?」
 質問を質問で返された。
ここにはリンとトモユキしかいない。
 当然カズイの姿もない。
 「お前、俺をカズイの代わりだと思ったのか?」
トモユキが訪ねるとリンは素直に認めた。
 「おかしいと思ったんだ。お前が俺に構うなんて」
トモユキはリンを睨みつけた。
リンはトモユキの視線を真正面で受け止めた。
 「……期待させるな!俺はカズイじゃない!」
 期待していた分、失望も大きい。
カズイに勝ったと思ったら全然そうじゃなかった。
 舞い上がった昨日の自分が情けない。


カズイは数日の間、遠方に出かけているだけだった。
 「元気にしてたか?」
 土産を片手に何も知らないカズイは呑気に微笑んだ。

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 2012年 12月23日 荘野りず

 トモユキはなかなか良い思い出来ない。
 結局今回もこんな扱いになってしまいました。
 次こそはトモユキの本気を!



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