素直になれない10のお題 カズリン(リン→カズイ)で攻略
10、素直になりたい
他のヤツにはそうでもないのに、どうしてもアイツには素直になれない。
けどアイツは俺が意識してるっていうのにどこ吹く風だ。
Bl@sterチーム戦優勝者、それが俺のチームペスカ・コシカ。
全戦全勝、それが当たり前。
敵対したチームには必ず報復を行う。
その夜も報復をして、好きなだけ暴れた夜だった。
溜まり場でいつものように祝杯を挙げていたが、カズイがいなかった。
辺りを見渡してみても、どこにもいない。
「なあ、カズイは?」
その辺にいた仲間に聞いても、かえって来る返事は『知らない』だった。
仕方がないので一人で酒を飲んでいた。
思う存分酔って、自室に向うと先客がいた。
「……カズイ」
カズイは読んでいた本から目を離すと、俺を見た。
「またやってきたのか。服に血がついてる。脱げよ、洗ってやるから」
他の奴の前ではそうではないが、カズイの前で脱ぐとなると抵抗がある。
「やだよ。自分で出来る」
するとカズイは笑って言った。
「この前、洗濯に失敗して助けを求めてきたのは誰だっけ?」
からかう様に言われて頬の辺りが熱くなる。
こうなるのもカズイだからだ。
じっとカズイを見ると、その顔の美しさに見惚れる。
長い睫毛、整った鼻筋、適度な筋肉。
そして月の光によってのみ解る、青い髪。
見つめ続けていると、気づかれた。
「どうしたんだ?俺の顔に何かついてる?」
「なんでもない」
そう言って部屋から出た。
今日はカズイの部屋で寝よう。
それにしてもなぜこうなのだろう。
カズイの前では素直になれない。
……素直になりたい。
この時素直になれなかったことを、俺は後悔する事になる。
俺がそこに着いた時には、一面血の海だった。
昨日まで馬鹿騒ぎしていた連中が大勢――殺されていた。
そしてその中に……。
「……カズイ」
何でこんな事になってしまったんだろう。
その時、俺の後ろからバタバタと足音が聞こえてきた。
「リン!これは一体……」
トモユキだった。
初めはボーっとしていたのに、現実を受け止めると俺を睨みつけた。
「お前……裏切ったんだろ!」
「違う!」
この場所を知っているのは兄貴しか思いつかない。
アイツはまた俺の大事なものを奪ったんだ。
あの時のように。
俺はチームの仲間に背を向けて走り出した。
そして今、俺はトシマにいる。
カズイによく似たアキラと腕を組みながら歩いている。
「リン……いいかげんに離れろよ」
「やだ」
死が日常のこの場所では、いつ会えなくなるか解らない。
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2012年 1月22日 荘野りず
リンってカズイに対してはツンデレのイメージがあります。
少し甘えているのかもしれませんね。