素直になれない10のお題 カズリン(リン→カズイ)で攻略

3、…お前なんか


 Bl@sterでカズイが怪我をした。
リンを庇っての怪我だった。


 慎重なカズイにしては珍しく、かなり重かった。
リンを庇ったせいもある。
だがそのリンは、なんでもないような顔をしている。
 仲間は流石に冷たいとリンを評した。
いつもカズイを疎ましく思っているらしいトモユキでさえ彼を心配した。
リンはいつもカズイと星を見るビルへと入っていった。


 「……どうして素直になれないかな、俺」
リンは一人ごちた。
 他のメンバーには思ったことをポンポン言えるのに、なぜかカズイにはそうはいかない。
あのじっと見つめてくる瞳が、今日は責めているように見えた。
 「あんなつもりじゃなかったのに……」
カズイはリンを庇ったとき、大丈夫かと目で言っていた。
リンにとってカズイはいつも心配してくれる保護者のようなものだった。
そしてそんな彼に劣情を覚えてもいる。
カズイに触れられただけで、リンの肌は熱を持った。
だからリンは最近カズイから距離を置いていた。
カズイは不思議そうにしていたけれど、リンが無視するとリンの望むままにした。
 「……何で俺なんか庇ったんだよ」
リンが相手より反応が遅れるのは珍しい。
 今回の相手チームは集団でリンを狙ってきた。
 五、六人なら物の数ではない。
だが相手はチームの主戦力をリンにぶつけてきた。
 流石のリンもいなしきれず、カズイが庇ってくれなければ彼以上の怪我を負っていただろう。
カズイはリンを庇った後で、こんな事を言っていた。
 「リンの綺麗な顔に傷でもついたら大変だから」
 顔なんかどうでもいいとリンは思った。
 星を見つめているうちに夜が明けてしまった。
 昼はテンションが上がらないのでその場で寝た。


 夜になってリンが起きると小雨が降っていた。
 溜まり場には戻りづらい。
 仕方がなくリンはカズイの病室へと向かった。


 「……カズイ?」
 恐る恐る訊ねると、カズイは薄く笑った。
 「リン」
 体中の包帯が痛々しくて直視できずにいた。
カズイは読んでいた本に栞を挟むと本を閉じた。
 宇宙の事が書いてある本らしい。
 「……あの、その、俺のせいで」
リンはしどろもどろになりながら謝罪を口にする。
そんなリンを見てカズイは笑った。
 「何だよ!人が折角謝ってるのに……」
 「いや、やっぱりリンは可愛いなって思って」
 「はあ?」
 男に可愛いなどと言ってどうなるのか。
カズイは女にもてるのに。
 「照れてるとこも、素直じゃないとこも、全部可愛い」
カズイは目を細めて柔らかく笑って。
 「……ッ!バカじゃねえの!お前なんか……」
――大好きだ。
その言葉を、リンは飲み込んだ。

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 2012年 12月22日 荘野りず

素直なカズイってどうだろう?そんな気から書いたものです。
 何かカズイっぽさがないな。



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