素直になれない10のお題 カズリン(リン→カズイ)で攻略
5、本当は、
ペスカ・コシカの仲間と過ごす、血なまぐさい日々。
その時間は楽しくて何よりも大切だった。
試合が始まると、リンは真っ先に敵チームに飛び込んでいく。
そして強烈な蹴りをお見舞いする。
相手が顔をゆがめる様を心底楽しそうに眺める。
その頃には他の仲間が周りを潰している。
ペスカ・コシカは普通じゃない。
そんな事をいう連中もいたが、気にしない。
それが自分達のやり方だ、誰にも文句は言わせない。
でも。
「やりすぎだ」
ナンバー2であるカズイに否定されてしまう。
他の連中に言われるのなら無理矢理にでも納得させるのに、カズイが相手ではそれが出来ない。
「……俺にだけ言うのか?他のやつだってこれくらいやるぜ?」
わざと乱暴な言葉を使う。
元々言葉遣いはあまり良くないが、こうする事で自分の気持ちを伝える。
昔は大人しい言葉を使って兄に好かれようと頑張っていたけれどそれも今では恥ずかしい。
「リンが危ない真似を止めれば皆もそれに倣うだろ」
それから報復も止めろと言われた。
「報復がないなんて俺ららしくない。別にカズイには無理強いしてないだろ」
「本当はBl@sterも参加して欲しくないんだ。リンには血も暴力も似合わない」
暗に弱いと言われた気がして、リンはカズイを睨んだ。
「俺はペスカ・コシカの雄猫だ。そこいらのチンピラには負けない」
カズイは処置なしとでも言いたげだったが、リンの前から消えた。
「本当は、嬉しいんだけどな」
リンは溜まり場にある部屋で横になっていた。
ここの壁は厚く、防音にはもってこいだ。
独り言を言いたいときにはこの部屋は重宝する。
「カズイの事は嫌いなわけじゃないんだ。けど口が滑ると言うか」
誰に言うわけではないが、壁から反響してくる自分の声が何だか恥ずかしい。
カズイの事は大切だと思っている。
今の関係も不満があるわけでもない。
進展がないのも素直になれない自分が悪いのであって、カズイのせいではない。
自分の気持ちを素直に伝えるのは拒絶されたときが怖い。
容姿には結構な自信がある。
でも男同士なのだ。
カズイだって自分に告白されたら戸惑うだろう。
「どうしろっていうんだよ」
リンはイライラして壁にクッションをぶつけた。
「リン、おはよう」
翌日。
リンが目を覚ます前にカズイが部屋を訪ねてきた。
寝癖を確認しながらリンは起き上がった。
相変わらずカズイは格好いい。
「おはよカズイ。……って、何自然に入ってきてんだよ」
カズイは悪戯っぽく目を細めた。
「昨日は有難う。嬉しいよ」
何の事だか見当がつかない。
「昨日の夜、ドア開いてたぞ」
「!?」
それで思い至る。
昨日の独り言がカズイに聞かれていたのだ。
「本当に嬉しいよ。俺もリンの事好きだ」
本来は嬉しいはずのその言葉がリンの顔を赤くした。
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2013年 1月4日 荘野りず
甘めのカズリン。
いつもカズリンというと暗くなりがちなので今回はちょっとコメディっぽく。
カズイってクールな顔して素直デレだと思います。