家族に対する10のお題 シキリンで攻略

1、朝の挨拶


「おはよう、おにいちゃん!」
リンはシキの部屋の扉を開けると、元気よく言った。


 俺が起きるのを先延ばしにしていると、リンはずかずかと部屋に入ってきた。
そして寝ている俺の上に載ると、楽しげに身体を揺らしてくる。
 少し振動に酔いそうになるとやっと頭が覚醒してくる。
 「リン」
 名を呼んでやると弟は嬉しそうな声を出した。
 起き上がって着替えをする。
この時もリンは嬉しそうに抱きついてくる。
 「おい、離れろ」
 「えへへ、おにいちゃんのからだかたーい!」
キャッキャッと笑う。
 正直このノリは苦手だ。
だが甘えてくる弟を無下にもできないので、何とか応える。
 「……重い」
 着替え終わるとリンはネクタイを解こうと四苦八苦する。
いつも自分でよく解らないものを見ると解明しようとする癖だ。
 最近は俺が勤め先を変えたせいか、いつもより多く甘えてくる。
 「ネクタイを解くな。その代わりに挨拶をしよう」
 「挨拶?」
 付きまとわれるのもうっとおしいので、俺はそれに代わる事をして弟を遠ざけようと考えた。
 「こうだ」
そう言って、俺はリンの柔らかそうな唇に手を当てた。
 軽く唇の線をなぞった後、指をどけて自分の唇を合わせる。
 指は離しても手はリンの顎を掴んだままだ。
 焦らす様にゆっくりと舌を差し入れる。
 「ん!?」
さすがにこれにはリンも戸惑いを隠せないようだ。
 大きな瞳を更に大きくして俺を見ている。
 舌先が絡まり合い、淫らな音を立てる。
リンは強制的に眼を閉じた。
 勢いあまってリンをベッドの上に押し倒す。
 「……ん」
 苦しそうなリンの声。
この歳にしてこれだけ色気があれば十分だ。
 最後に、思い切りリンの口内を舌で荒らす。
 短く喘ぐような声が部屋中に漏れる。
 俺はリンの唾液を舌でぬぐいとり、唇を離した。


その日の朝食の風景はあまり思い出したくない。
リンは少し恥ずかしそうにしていただけだが、同居しているリンの母親は始終不審そうな顔をしていた。
……まあ、それも仕方がないだろう。
 今日はいつもより起きてくるのがに二十分ほど遅かった。
 俺がリンに何かをしたと思う方が自然なのだろう。
だが誓って言うが、俺はただリンに新しい朝の挨拶を教えようとしていただけで、特にやましい事はしていない。
ただキスをしただけだ。
それも兄弟仲良くしようという意味で。
 「そう言えばね、僕おにいちゃんと――」
 俺が悶々と悩んでいると、リンが嬉しそうに今朝の出来事を話し出そうとした。
 「リン、今日は予定はないから、お前の太刀筋をみてやろう」
そう言うとリンは口をつぐんだ。
 「本当?僕ねぇ、僕ねぇ――」
どうやら新しい朝の挨拶は却下となったらしい。

 _______________________
 2012年 6月26日 荘野りず

 シキリン好きなのに、いざ書くとなると難しい。
 小さい頃はそれなりに仲良しだとペスコシ壊滅時が燃えるんですよ。
リンも小さい頃は「おにいちゃん」とでも呼んでいたんじゃないかと思って書きました。



inserted by FC2 system