家族に対する10のお題 シキリンで攻略
2、似てるところ、似てないところ
雨が降りしきる中、リンはシキと対峙していた。
両者怪我を負っていて、どちらが勝つかは解らない。
対峙したままリンとシキは笑っていた。
やはり自分と目の前の男は似ていると思う。
死を目前にして笑っていられる神経。
突出した戦闘能力。
まるで双子のようだと思った。
性格も嗜好も違う双子。
男も同じ事を思っているに違いない。
子供の頃、シキはしきりに竹刀を振っていた。
リンたちの家は兵役免除の特殊階級だったが、シキはいつも鍛錬を怠らなかった。
リンは竹刀に遊び相手を取られた気がして苛立った。
けれど彼の母は自由にさせなさい、とシキを応援した。
彼女としては跡取りの長男がいなくなってくれればいいという思いもあったのだろう。
今、リンは日本刀を振るっている。
彼の母には予想もつかないだろう。
そんなところが嫌で家を出たのだ。
幼い頃は自分はあの優秀な兄に何一つかなわないと思っていた。
兄の真似をして竹刀を振ってみたけれど、母親に邪魔された。
「あなたはおにいちゃんとは違うの。お母さんの言う事を聞きなさい」
リンが何かを始めると、決まって彼女は反対した。
そしてBl@sterというゲームがあるのを知ると、家を捨てて喧嘩に明け暮れた。
たまにスカウトされることもあったが、リンは全て断った。
どれも三流の会社だったからだ。
それにリンは目標である兄を超えていない。
トモユキなどは不満を言ったが、頭であるリンが一言言えばすぐに黙った。
そんな楽しい時間はあっという間に過ぎていき、リンは兄と再会した。
紅い瞳ですぐに解った。
今は組織に雇われていると言う。
そして彼はリンに星の見える場所を尋ねた。
リンは取って置きの場所を教えた。
その結果、仲間が死んだ。
重い日本刀を振る。
腕がちぎれそうだ。
だが珍しくシキは守りに徹している。
――攻めるなら今だ。
太腿の痛みを気力だけでねじ伏せる。
シキはこんな場面でも笑っている。
リンの手にした日本刀がシキの右肩に沈んでいく。
刀を抜くと、大量の血液があふれ出してきた。
「……アンタと俺は似てるよ」
シキはまだ笑っている。
「でも、全然似ていないんだ」
そう言うとリンは日本刀を振り上げた。
「……愛してた、俺なりに。それだけは本当だ」
刀がシキに刺さった。
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2012年 9月27日 荘野りず
不器用な兄弟ゆえに色々すれ違った。
「憧れてた」そうだから回想でそんな描写入れてみました。