無分類30のお題 →TYPE1

13、機械音痴(天然アキラ・ギャグ)


「これは……?」
アキラが問うと、エマは鼻で笑った。
 「通信機だ。そのくらいは理解できるだろう?」
 通信機など戦争に行くための授業で習っただけで、実物などもちろん見たことがなかった。
 黒光りする通信機はアキラの好奇心を大いにそそった。


トシマに着いたばかりで、男の死姦など見てしまったアキラは、動揺を隠しきれない。
 思わず近くの喫茶店跡に潜り込む。
――ぞうだ、ここはそういう街なんだ。
アキラはそう意識しようと努めるが、先ほどの映像が脳内から消えてくれない。
 「……」
 荷物に紛れ込んでいる通信機を素早く探し当て、コールする。
 数秒もしないうちに相手は出た。
 「何の用だ?」
 不機嫌を隠さないエマの声。
それがアキラを幾分か安心させた。
 「いや別に。用ではないんだが」
 「……私は忙しい。切るぞ」
 本当に彼女は連絡を切ってしまった。
 『公に出来ない立場の人間』とやらは相当忙しいらしい。


 思えば孤児院育ちの自分にはオモチャとの接触が少なかった。
 当時はないならないで困らなかったが、アキラかて男子である。
 通信機のような男心をくすぐる絶好のオモチャが手に入ったのだ。
イグラなんてやっているよりも、これを弄り回す方が楽しい。
トシマに着いてから、アキラは一日中通信機を弄り回して遊んだ。
ふと内部構造が気になる。
しかし壊してしまってはエマとの連絡が取れなくなる。
――どうしよう。
アキラは一時間ほど考え込んだが、どうせこちらから連絡を入れても、任務に忙殺されているであろうエマとの会話はそっけないに違いない。
ならば、少しくらいはいいのではないか。


その更に一時間後、アキラは自分がここまで機械音痴だったとは……と思い知らされた。
 内部の部品は配列が滅茶苦茶、コードも適当に伸ばしたせいで切れている。
 「……どうしよう」
アキラにとって最も後悔した瞬間だった。


その一方で、エマも困っていた。
アキラとの連絡が一切つかないのである。
このままでは兎園の子供を送り込む計画――エマにはアキラがナルニコルだという確信があった。
 「え、エマ?」
 作成中の書類にインクの染みを零したまま考え事をする上司に、グエンが遠慮がちに声をかける。
 「……完全にロストだ。あのガキ、私の通信機を壊したようだ」
 「それでは計画は?」
エマはため息を零し、三日間連続徹夜の顔で言った。
 「私は知らん」


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 2015年 1月17日 莊野りず

 ショートショートショートくらいの長さの(自分的には)シュールギャグです。
 一見何でも出来そうな、基本何でもやれば出来る子的スペックのアキラが機械音痴だったら面白いなあ〜なんて漠然と思って書いてみました。
 最初から長い文章は書けないって解ってるんだし、ケイスケもリンも源泉も、この話ではあえて出しませんでした。
……でも確か、アキラの受け取った通信機って一方的な連絡しか出来なかったような……(汗)。



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