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15、停電(カズリン)
Bl@ster優勝常連チーム、ペスカ・コシカ。
今宵の彼らは既に『報復』も終えて、酒が入っている。
こうして仲間と馬鹿騒ぎをするのは楽しい。
たまに悪酔いする連中に絡まれたりもするけれど、リンはこの時間が大好きだ。
今日は派手にやろうという事で照明は限界までつけている。
……それが原因だったのだろう。
突然、辺り一面が闇に包まれた。
「なんだ?停電かぁ」
「雷でも落ちたのか?」
「バーカ!停電だろーよ」
それまで騒いでいた連中はこの事態すら楽しむようにワイワイ喚く。
酒も入っているせいか、正常な判断が出来ないのだ。
リンは薄酔っぱらってはいたが正気だった。
しかしトモユキを始めとする他の連中は酔っているせいか、判断能力を失っている。
「大丈夫か、リン?」
隣にいたカズイがそう尋ねてくる。
「俺がこんなもんにビビるわけないだろ」
またいつもの子供扱いかと言外に不機嫌をにじませて言う。
「それもそうだよな。多分ブレーカーが落ちたんだな。どこだっけ?」
こんな時でもカズイは冷静だ。
トモユキはただ喚き散らしていっるだけというのに。
「ブレーカの位置なら知ってるけど、ここからじゃ距離あるしなぁ」
リンが暗闇の中でカズイのいる当りを見る。
――あ。
窓から差し込む月の光が、カズイの髪を照らしている。
普段は黒にしか見えないそれが綺麗な青に変わる。
「……それは困ったな。俺の部屋に懐中電灯があるから取ってくる」
リンが見とれているとも知らず、カズイは自分が使っている部屋に行こうとした。
「俺も行く。……ほら、ここにいても暇なだけだし」
いつまでもカズイと一緒にいたい一心で勇気を出してはなった一言だが、カズイは特に何とも思わなかったらしく、そうだなと納得した。
「……」
数少ない窓から月の光が差し込むたびに、カズイの青い髪が見える。
それがなんだか楽しくて会話を忘れていた。
それほどまでにリンはカズイの髪に魅せられていた。
「どうした?さっきからずいぶん大人しいじゃないか?」
カズイがからかうように後ろのリンを振り返る。
「……別に。ただ暗いのも悪くないなって、そう思ってただけだ」
嘘はついていない。
部屋が暗いおかげで普段は屋外でしか見られない、カズイの青い髪が見られるのだから。
「変な奴だな。そろそろだと思うんだが……」
カズイは手探りで前に障害物がないか慎重に確認しながら進んでいる。
いつものリンなら短気を起こして騒ぐところだが、今はカズイの髪に夢中だ。
「あ、たしかこの辺にタイヤが積んであったような……」
「なんだってそんな危ないものを……。リン、俺の傍を離れるなよ」
タイヤが積んであるというのは嘘だ。
だがカズイはこの溜まり場をあまりよく思っていないらしく、ここの構造には疎い。
リンはそれを利用した。
「おっと」
事故を装ってカズイに勢いよく抱き着く。
「うわっ!どうした?」
「タイヤに躓いた。悪い、重いだろ?」
思い切りカズイの全てを感じる。
いい匂い、硬い筋肉の感触、暗闇でこそ耳に響くカズイの声――。
「いや、リンは軽いから。肉食べる割に細すぎだぞ」
「体質だろ?いてっ!」
上から何かが降ってきた。
今度は嘘ではない。
廃工場に残っていた部品だろうか。
そんな事を考える前に、リンはカズイにキスをしていた。
硬いものが落ちてきた衝撃で頭が下を向いたせいだ。
「……」
気まずい沈黙。
それを先に破ったのはカズイだった。
「ゴメン、初めてだった?」
ややずれた質問にリンは毒気を抜かれ、少し呆れた。
「男同士のキスくらい普通って国もあるんじゃん?別に気にしてねーよ」
などと言いつつも、心臓はバクバク言っている。
今度は早く懐中電灯が見つかる事を切に願うリンだった。
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2015年 1月17日 莊野りず
カズリンで停電パニック☆
書く分には楽しかったけど、読むとどうなんだろう?
リンの事だから何かきっかけさえあれば積極的に襲い受けに迫ると思うんですが、どう思われます(笑)?
でもカズイはリンにとって聖域だろうしなぁ……。