無分類30のお題 →TYPE2

16、最新情報(源リン)




「あー今日も例の新人の事でここ来てんのー?」
よく飽きないね、なんて言いながら当然のように源泉の隣に腰を下ろすリン。
「なんだ?茶化すだけなら用は足りてるぞ?」
「つれないんだからー。マスター、俺カクテルね」
元々源泉に用があったのだろう。
リンはウエストバッグから写真の束を取り出した。
いつ見てもコンパクトサイズなのに大した収納力だと思う。
何事かを呟きながら、やっと目的のものを見つけたらしい。
「ああ、これこれ」
「いきなりどうした?いつもは適当にはぐらかしてるだろ」
「今日のはオッサンのお目当て、新人情報だよ」
思わずリンから写真を奪い取ろうとするが、そこは歳の差。
リンの俊敏な動きには源泉はついていけない。
勢い余ってカウンターに頭をぶつけていた。
「いててて……」
それを見て愉快そうに笑うリン。
――全くこのガキときたら。


一時間後。
「オッサン見てみて!最新じょーほー!」
「あーハイハイ、オイチャンはちゃんと聞いてるぞー」
酔っぱらってろれつが回らなくなるリンと、それを介抱する源泉。
――おかしいな、こんなはずじゃなかったのに。
一体いつから狂ったんだっけ?


情報が、それもトシマに来たばかりの新人の情報がどうしても欲しかった。
しかし涼しい顔をしてカクテルを傾けるリンがそう簡単に吐くとは思えなかった。
そこで彼が席を外している間に、グラスにリキュールを注いだのだ。
源泉的にはごく微量で、ただ軽く酩酊感があるくらい。
だがリンはそうはいかなかったらしい。
「……まだまだガキだよな、コイツも」
「純度の高い酒を飲ます悪い大人が言ってもね」
マスターは軽くウィンク。
今日の長い夜はリンの介抱で潰れるのだろう。
それでも、この街にリンを一人にする事など考えられない、人のいい源泉だった。




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2015年 4月7日 莊野りず

酒で失敗するパターンが多いですね、ウチのリンは。
源リンは色んな意味で安心感があります。
別ルートでアキラを幸せにしてるからかな。


 
  





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