無分類30のお題 →TYPE2

7、轟く(カズリン リンvsアキラif)




ペスカ・コシカ。
そのチームの名はエリアゴーストだけではなく遠い地、エリアレイでも轟いている。
LOST。
その個人戦優勝者の名もまたエリアゴーストにまで轟く。


Bl@sterにもいい加減に飽きて来た。
昔のようなただのストリートファイトが楽しみたい。
元々リンはそういったものに憧れてBl@ster参加を決めたのだ。
「最近つまんねーの」
リンが溜まり場中央の土管に腰掛けていると、ニヤニヤしながらトモユキが近づいてきた。
「いい話があるぜ、これ見ろよ」
そう言ってトモユキが見せてきたのはBl@sterファンの強者インタビュー記事だった。
以前はリン達ペスカ・コシカにも何度か取材に来た覚えがある。
メインターゲット層は自分では戦う勇気もないただの観戦者だ。
「で、これがどうかしたって?」
リンはトモユキが拡げたページをざっと眺めて彼を睨む。
つまらないものを見せやがって、という事である。
「いや、それじゃなくてコレ」
そう言ってトモユキが指差したのは……。
「カズイ!?」
リンはがぱっと身を起こした。
顔立ちといい、髪型といい、冷静そのもののひょうじょうといい、どう見てもカズイだった。
「……そう思うよな。俺も初めて見た時はびっくりしたのなんの」
「って事は別人なんだな?」
記事をよく見ると『エリアレイ・個人戦の覇者!』という文字が紙面に踊っている。
「……世の中には同じ顔した奴が三人いるっていうけどホントなんだな」
リンがしみじみそんな事を考えていると、トモユキが楽しい事を思いついた時の顔をした。
「……暇なんだろ?だったら、どっちが強いか白黒はっきりつけに行かねぇ?」
それはそれで楽しそうだ。
チーム戦ではリン個人の強さは曖昧だし、個人戦でどこまでやれるのか試してみたい。
それに何より、カズイによく似たこの男の事が強烈に頭に残った。
「よし、じゃちょっと遠出してくるか!」


そんなワケで今リンとトモユキはエリアレイにやって来た。
流石強豪の地と呼ばれるだけあって、道を歩くのはほとんどがリンの二倍はありそうな大男ばかり。
誘ったトモユキが若干ビビり始めているのを見て情け姿を現したないと言ってやる。
しばらく歩いて、エリアレイのBl@sterが行われている場所に着いた。
有刺鉄線で囲まれたフィールドでは細身の男がマッチョを相手に素手で殴り合いを繰り広げている。
よく見るとあれが例のカズイ似の男だと解った。
「アイツだ!」
トモユキが指摘するまでもなく、リンは気づいていた。
――アイツ、できる。
リンはそう直感した。
勝つか負けるかは全くの未知数。
いつものチーム戦のように頼れる仲間は誰一人いない、正真正銘の一対一での戦い。
リンが求めていたのはこれだったのかもしれない。
さっそく出場登録をして、雑魚を蹴散らしていく。
初めてどう見ても少女のような少年が勝ちあがっているのを観客は唖然として見ていた。
オッズはどんどん下がっていく。
とうとう決勝戦、あの男との戦いだ。
胸がわくわくする。
純粋に戦いを楽しめる日など久しぶりだ。
入場してきた相手はどうやらアキラという名らしい。
「俺はリン。エリアゴーストからアンタの噂を聞いてここまで来た。……強いんだよな?」
「さあな」
興味がないと言った調子でアキラは上着を脱いだ。
細身の方ながらに筋肉は程よくついていて、腕力もありそうだ。
これなら相手として不足はない。
審判の試合開始という声と同時にリンは強烈な蹴りをアキラに繰り出す。
彼は両腕でそれを防ぐが、リンの厚底ブーツの威力は半端ではない。
しばらくは両手はつかえまい。
リンは得意の空中攻撃を雨のように降らせる。
「いい加減に、しろ!」
長い足がリンの太腿にヒット。
それまで身軽に飛び回っていたリンの動きが急に鈍くなる。
その好機を逃さず、アキラは強烈な拳を鳩尾に繰り出してきた。
「こんの……っ!」
苛立ったリンは急所に拳をめり込ませた。
いつもはあっさり時間内に終わるのに、この戦いは長かった。
結果、タイムアップで引き分けとの判定が出た。


「引き分けかぁ。つまんねぇ」
戦ってもいないトモユキがぼやく。
リンとしては久しぶりに危険と隣り合わせのスリルが味わえて満足だった。
きっとあのアキラという青年も同じ気持ちだろうと思う。
彼が退場した後には青いツナギの男が尻尾を振る犬のように駆け寄っていた。
あの二人もリンとカズイのような関係なのだろうか。
そんな他愛もない事を考えながらエリアゴーストへと戻る。
帰った先にはルール違反に怒り狂うカズイが待っていた。



__________________________________________
2015年 3月6日 莊野りず

せっかくのカズイとアキラそっくりさん設定があるので、それを利用してみました。
カプは特に意識してないです。読んだ方の感想にお任せです。
どっちが強いのかと言えば僅差でアキラだと思いますが、素手の戦いなので引き分けにしました。




inserted by FC2 system