「インペリアルラス!」
槍を構えた男が叫ぶと、身体の周囲が光の粒子に包まれる。
ギルヴァイスの部下二人はあっさりとその存在を消し去られた。


【ジョネラルの兆し・3】


剣を構え、その白い翼を切りつける。
一瞬だけ戸惑っていたようだが、すぐに体勢を立て直してくる。
「なぜ……お前は私を愛してくれないんだ!ジーナローズぅ!」
槍を構えるだけの力も失い、メルディエズは叫ぶ。
彼は実はジーナローズを愛していたのだろう。
フォレスターの研究所でも、彼は人間を贔屓した。
「……姉さんの愛?そんなもの貴様には欠片もくれてやらん」
そう言って剣をメルディエズの胸に突き刺すとレイジは暗く笑った。
彼の後ろのジーナローズは沈黙を守っていた。


その後、魔界に帰ると舞おう復活の方を聞きつけてきた者たちが城に集まった。
ジーナローズはステージの上で弟レイジと共に立っていた。
その内容は今回の戦を勝ち抜いてくれた礼と弟への感謝の言葉だった。
「本当に有難う」
――最愛の弟。
そんなの嘘だ。
本当に愛しているのなら、なぜあの時にその身を捧げた?
なぜ俺を一人にした?
口には出せない鬱憤が溜まりに溜まったとき、レイジは自覚もなしに刀を抜いていた。
その刃がヴィディアに刺さる。
「……え?」
突然の事に、ヴィディアは言葉もない。
ただ自分が刺されたことを自覚するので精一杯だ。
それでもレイジの事を笑顔で見つめ、その手に剣が握られているのを見て愕然とした。
「嘘でしょ?レイジ……」
ただそれだけを発して、その唇は閉ざされた。
ヴィディアと同じく警備に当たっていたギルヴァイスも彼女に駆け寄る。
「レイジ、これは――」
うるさい、邪魔だ。
ヴィディアのときと同じように剣を突き刺す。
ああ、なんて剣が、気持ちが軽いのだろう。
その場に崩れ落ちるギルヴァイスには気を払わずにジーナローズの方を見る。
作り笑いを浮かべたその顔、その瞳。
まだ薬は効いてこないのか?
そう思った途端、今まで我慢していた感情が爆発してくるのを感じた。
――そうだ、こんな奴らなんかいなくてもいいじゃないか。
そう思った時にはもう遅かった。
ステージ前の一列目の悪魔たちが悲鳴をあげる。
レイジが剣を軽く振るっただけで、面白いように皆が次々と死んでいく
剣をはらった事により、ジーナローズの白い頬にも血のしみがついていく。
その時のレイジは暴走していた。
それをジーナローズは知っていた。
けれど止めなかった。
いや、止められなかった。
空虚な心がゆっくりと満たされていく感覚。
これはこんなに甘美だったのだろうか。
身体中に溢れる魔力を、ただ弟にだけ分け与えているので、彼女にも十分に余裕がある。
飛び回るユーにまでも彼はあっさりと殺した。
そして彼は微笑む。
「もう誰もいない。姉さんを愛せるのは俺だけなんだ」
そう言って彼はジーナローズを抱きしめる。
強く強く抱きしめる。
そして耳元で熱く囁く。
「愛してる」




















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2012年 7月8日 荘野りず

あっさり済ませたメルディエズ戦。
彼ほど弱いラスボスは見たことないです。
ジーナローズルートは最初見たときはビックリしましたが、ゆっくり萌えました。


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