貴方に願う10のお題 レイジナ・アベレアで攻略

1、笑顔を見せて(レイジナ)


オレの姉さんは笑わない。
ただ微笑むだけだ。
 頼むから、笑顔を見せて。


 魔王城を奪還し、姉さんの精神世界でやっと彼女と再会した。
 姉さんは美しい。
それに優しい。
そうヴィディアとギルから聞いていた。
 実際に会っても、その微笑みは優しげであり、寂しげでもあった。
オレが愛してやると言うと、彼女は躊躇いながらオレの手をとった。


 「おい、大丈夫か、レイジ」
ギルの声でオレは目を覚ました。
――そうだ、姉さんは。
 「大丈夫よ、レイジ。私はここにいるわ」
 「姉さん」
やっと姉さんを復活させられた。
これはつまり人間達よりオレ達を選んでくれたって事だよな?
 少しづつ蘇る記憶の中では彼女はいつも人間の事ばかり気にしていた。
なのにオレたちを選んでくれたなんて、嬉しすぎる。
でも姉さんは笑わない。
 物憂い気な表情ばかりだ。
オレは姉さんの笑顔が見たい。
そんな悲しそうな顔じゃなくて。
どうすれば姉さんは笑ってくれる?


ディフォルニア平原でのオレの演説は好評だった。
オレのジェネラルという通り名が効いたのかもしれない。
ヴィディアやギルと今後の事について話し合っていると、パージュが血相を変えてこちらに走ってきた。
 「アンジェラを見なかったかい?」
ぜえぜえと息を切らしている。
 「そういえばフォレスター様もいないわ」
ヴィディアがそう言うと、ギルが何かを考え込んでいる。
 「レイジ、フォレスター様が研究所で言ってた事、覚えてるか?」
そういえばアンジェラを見て何かを言っていた。
オレ達はフォレスターの元へ向った。


フォレスターの研究所で言われた事には驚きを隠せなかった。
 何より姉さんがメルディエズと知り合いだったなんて。
しかもプロジェクト・マトリクスなんていう大それた事をしたなんて。
オレは姉さんに詰め寄った。
 「何で話してくれなかったんだよ?大事な事だろ?」
 姉さんは黙り込んでいる。
だが、やがて口を開いた。
 「……話していたら人間を殺すのを止めてくれた?」
 今度はオレが言葉に詰まる番だった。
 「……」
 姉さんの虚ろな瞳が諦めに染まる。
……こんな顔をさせたかったわけじゃない。
オレはただ姉さんに笑って欲しいだけなのに。


 大天使長メルディエズを倒したオレたちを待っていたのは、魔界を挙げての祝福だった。
 姉さんの瞳はまだ笑わない。
 姉さんはオレを愛してくれない。
オレだけを愛してくれない。
――それなら皆消してしまえばいいじゃないか。
その時のオレは夢中で剣を振るった。
 魔王城中に響く仲間達の悲鳴。
そして誰もいなくなった。
 「……姉さん、これで人間を殺す者はもういない」
――だから。
 「笑顔を見せてよ」

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 2012年 月日 荘野りず

 ほのぼのにしようと思ったのに、なぜこうなった。
レイジナは本編でも生存でも死亡でもダークなので、こうなってしまう。



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