貴方に願う10のお題 レイジナ・アベレアで攻略

10、どうか、幸せでありますように(アベ(ゼロ)レア)


いつの間にか意識を失っていたアベルは、謎の声で目を覚ました。
 傍らに倒れこんだレアがなぜか生き返っていた。
 「アベル様?わたしは一体……」
アベルはレアを抱きしめた。


ゼロ。
それが生まれ変わった新しいアベルの名前。
カイン達は今までの対立も水に流した。
キボートス島でマティアと共に新たな生活が始まった。


 「ゼロったらわたしの言う事を聞かないんだから!」
 「まあまあ。後でわたしの方から言い聞かせますから」
マティアとレアは洗濯をしながら会話に花を咲かせていた。
 毎日のようにゼロのいたずらの愚痴を言うマティア。
レアは少し寂しさを感じていた。
 「どうかした?」
 「いえ……」
 「なにかあったの?悲しそうな顔してるけど」
レアの様子がおかしい事にマティアは気がついた。
 「ゼロが……マティアさんの事を好きみたいで、わたしは少し……」
 答えに詰まっている。
 「もしかして、それってやきもち?」
マティアがいたずらっぽく言った。
レアは赤面した。
 「そうかもしれません」
 「でもゼロが好きなのは貴方よ」
マティアは洗い終えた洗濯物をロープに通した。
 手が止まっているレアの顔を覗き込んだ。
 「絶対そうよ!確かにゼロはわたしの事もカインの事も好きだけど、貴方は別格よ」
 自信満々に言った。
 「そうですか?けどわたしは不安なんです」
 「何が?」
レアの表情は晴れない。
 「あれだけ沢山の人たちに迷惑をかけてきて、幸せになっていいのでしょうか」
これにはマティアもすぐに返事を返せない。
 確かにアベルだったゼロは悪い事も沢山してきた。
でもそれはカインの痛みが具現化したペインキラーだったから。
ゼロ自身の意思ではない。
だから。
 「貴方もゼロも悪くない。だから幸せになっていいの!」
レアは納得していない表情だったが、マティアは残りの洗濯物をロープに通した。


 夜。
マティアとレアが腕を振るった料理を囲んで夕食を食べる。
ゼロはレアが作ったものばかり食べている。
 急いで食べるものだから口の周りにソースがついている。
 「ほらゼロ。付いていますよ」
レアがナプキンで口の周りを拭く。
ゼロは恥ずかしそうにしている。
 「ゼロったら、本当に小さな子供だね」
 「レアも大変だわ」
カインとマティアは微笑ましく笑う。
レアもまんざらでもない。
ゼロは子供扱いされるのを嫌がって部屋に逃げてしまった。
 「レア、あとはお願いね」
マティアがウィンクをした。
 「解かりました」
レアは食器を下げてゼロの後を追った。


 「ゼロ、こんな暗いところで何をしてるの?」
 電気のついていない部屋で、ゼロはベッドに寝転がっていた。
ゼロは捨てられた子犬のような顔をしている。
 「カインもマティアもオレを子供扱いするんだ」
 「貴方はまだ小さな子供です。大人扱いされたいなら相応の事をしないと」
ゼロはレアの傍に寄ってきた。
 「オレは大人だ。だってレアの事が好きなんだ!」
 思わず飛び出たと思われる言葉にレアは嬉しくなった。
 「有難う。わたしもゼロの事が好きですよ」
――ああ、幸せってこんな事を言うのだろう。
 「ゼロ、貴方が――」
――どうか、幸せでありますように。

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 2013年 2月1日 荘野りず

 アベ(ゼロ)レアスペシャルエンディングその後。
アベルが眉を寄せて困ったようなスチルが好きです。
ゼロになるとあの表情が増えて嬉しいです。
それにしてもカインにまで子供と言われてしまうゼロの歳は何歳なんだろう。



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