貴方に願う10のお題 レイジナ・アベレアで攻略

9、そのままの貴方でいて(アベレア)


幽葬の地下通路はとにかく冷える。
アベルは露出度の高い服を着ていたので、あっさり風邪を引いてしまった。


レアが困ったように微笑むので、今日一日は我慢する事にする。
 「すぐにスープが出来ますから」
 味に煩いアベルがここまで褒めるのはレアのスープだけだ。
 「それでは薬草を入れて……」
 薬草をすりつぶしたものをアベルの分の容器に入れていく。
 「それは何だ?」
アベルが喉をヒューっと言わせながら聞いてくる。
 「即効性の解熱剤です。副作用もありますが、アベル様は悪魔だから平気でしょう」
そう言ってレアはアベルの分のスープを彼の前に置いた。
 「アベル様は猫舌でしたよね。ぬるくしておきましたから飲んでください」
いつもの暖かいレアのスープは体中に沁みた。
やがてアベルの身体が痙攣している。
 「アベル様!」
アラギは運悪く出かけている。
しばらくすると痙攣していたアベルの身体が止まった。
 「……アベル様?」
レアはおずおずと話しかける。
すると紅い瞳がレアを視界に据えた。
 「どうしたんだい?美しいお嬢さん」
 「え?」
 見た目は確かにアベルだが、中身が豹変してしまったらしい。
 「わたしはなんと言うことを……」
アベルは胸元からハンカチを出すとレアの涙をぬぐった。
 「君に泣き顔は似合わないよ」
そう言ってさわやかなアベルの笑顔に違和感を覚える。
いつものカインを殺す、という暗い笑みではないのだ。
レアはハンカチをアベルに返した。
 「わたしには貴方は要りません。わたしが必要なのはアベル様だけです」
するとアベルはもたもたと逃げようとした。
 「逃がしません」
レアはステッキを翳して魔法を放った。
 光の帯がやがて蝋になる。
 「薬の効能が切れるまでそこにいてもらいます」
アベルはその言葉を聴くと絶望したように泣き続けた。


アベルが目を覚ますと、枕元にはレアがいた。
 看病してくれていたのだろう、疲れてそのまま眠ってしまったらしい。
スープが効いたのか身体が軽い。
 熱はあっという間にいつも通りに戻っている。
 見るとレアは何があったのかボロボロだ。
――オレが眠っている間に何があった?
 「あ、アベル様」
レアが目を覚ました。
レアは何かを疑っている。
 「どうかしたのか?」
そう言うとレアはオレに抱きついてきた。
 「アベル様!貴方はそのままの貴方でいてください」
そんなの言われなくてもそうするまでだ。
 何があったのか知らないが、それなりに大変だったのだろう。
 「オレがオレであるんだから、お前もお前のままでいろ」
レアは花が咲いたように笑って言った。
 「勿論です」

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 2012年 11月11日 荘野りず

 たまには毛色の違ったアベレアを!
というモットーで書いてみました。
あのアベルが君とか言ってる時点でギャグですかね。



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