悲恋系15のお題 レイジナ・アベレア中心で攻略

1、傍にいたいだけ(アベレア)


ここから出してくれるなら、誰でも良かった。
そんなわたしの考えを変えたのは貴方が貴方だったから。
 今なら確信を持ってそう言える。


 幽葬の地下通路は暗くて寒い。
 当然、朝の日差しも入ってこない。
レアは冷え冷えとした地下通路で目を覚ました。
 昨日は近くにいたアベルの姿がない。
いつものようにカインの元に行ったのだろう。
 「寒い……」
レアの息が白い。
 地上では少し暑さを感じる服装だが、ここはそれだけ寒いのだろう。
アベルがいつ戻ってきてもいいように朝食の準備をする。
カイン達はヴェローナの街に滞在中のはずだ。
 早めに戻るだろう。


レアが一人で朝食を食べていると、やはりアベルは戻ってきた。
 「いい匂いだな」
いつもは何も言わずに黙々と朝食を食べるのに珍しく褒めた。
レアは少し驚いて、でもやっぱり嬉しくなる。
 「すぐにアベル様の分も用意しますから!」
 声が弾んだ。
 「少しでいいぞ」
カインのペインキラーであるアベルは本来食事を摂らなくても平気だ。
レアが是非食べてくださいと言ってくるので食べている。
アベルは早速朝食に手をつける。
 今日のメニューはビーフシチュー、自信作だ。
 「美味い」
 「良かったです」
 食事を終えると、アベルは出かけると言い出した。
 「わたしも連れて行ってください」
 「カインのところに行くだけだ」
アベルはつれない。
レアも負けじと繰り返した。
 「わたしも連れて行ってください」
アベルは根負けしてレアを連れて行くことにした。
 「なんでお前はついて来ようとするんだ?アラギと待っていればいいのに」
 地下通路を歩きながらアベルが訊いてきた。
レアは当然のことを言うように言った。
 「傍にいたいだけです。わたしはアベル様と離れたくありません」
そして目で、迷惑ですか?と訊いた。
 表情には出さないが、アベルは照れた。
それを表に出さないように気をつける。
 「……変わった女だ」
レアも自覚があるのかそう言われても表情を変えない。
 「はい、変わっています」
そして続けた。
 「アベル様、ずっと傍にいさせてくださいね」


そんなレアの願いは最期まで変わることはなかった。
 短いレアの一生はアベルの傍にいた日々が一番輝いていた。





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 2013年 2月24日 荘野りず

最後の最後ですみません。
お題を見てすぐアベレアでやるしかないと思いました。
レアを幸せに出来るのはアベルだけです。



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