悲恋系15のお題 レイジナ・アベレア中心で攻略

2、指が、離れた(レイジナ)


やっと会えた。
レイジは喜びに震えた。
けれど彼の目の前のジーナローズの表情は曇っている。


 人間達に倒されたジーナローズが目の前にいる。
それだけでレイジは精神世界まで来た甲斐があるというものだ。
 「姉さん、帰ろう」
そう言って手を差し出しても彼女は応えない。
 「姉さん……?」
 彼女は寂しそうに首を振った。
 「人間に愛されない世界になんて意味はないわ」
ジーナローズの人間への愛はこれまでギルヴァイスとヴィディアに聞かされていたが、これほどとは思わなかった。
 彼女に手を伸ばした時、レイジの意識が途絶えた。
 繋がれそうだった指が、離れた。


 「……ジ!レイジ!」
 意識が戻ると精神世界での出来事を思い出した。
だんだん覚醒してくる。
 「ギル、姉さんは?」
ギルヴァイスが残念そうに首を左右に振る。
 「お前は頑張ったよ」
その励ましも今のレイジには空しく響く。
どうしても会いたかった。
 会って想いを伝えたかった。
けれど拒まれてしまった。
 今のレイジには姉のこと以外は眼中にない。
 先ほどからヴィディアが慰めの言葉を口にしているが、それも耳に入らない。
 「なあ、オレと姉さんはどんな風だったんだ?断片的にしか憶えていないから、詳しい事が知りたい」
ギルヴァイスは真剣な眼差しでレイジを見た。
しばらくそうやって見つめていたが、レイジの本気を感じたらしく語り始めた。


オレがお前の想いに気づいたのはわりと最近になる。
お前は昔からジーナローズ様の髪を見つめていたな。
その日はファレク湖であの方の謁見があったんだ。
 魔王様が来るっていうんで、集まった連中は興奮していた。
だってそうだろ?
いつもは遠くからしか見ることの出来ない素顔のジーナローズ様のお顔を拝見できるんだから。
お前とジーナローズ様は手を繋いで仲良く歩いていた。
その様は普通の姉弟にしか見えなかった。
その繋いだ手が、指が離れた時、あの方は魔王になった。
 人間を愛しつつも誰にも愛されない、満たされる事のない寂しさや空しさを抱える魔王にな。
お前は自分の事のように悲しそうだった。
 魔王であるということの苦しみを弟であるお前が一番理解していたんだ。
だからお前はあの方を求めるんだろうよ。
 同じ魔王の血族として、お前達姉弟はその血よりも濃い絆を感じているんだろう。
オレはお前達姉弟を見ると悲しくなるんだ、訳もなくな。
 愛されたい、満たされたいからこそ、ジーナローズ様はお前を拒絶するんだろう。
もう一人の自分を見ているようで嫌になるんだろうな。


それを聞いた時、悲しくないのに涙がこぼれた。
 「オレは姉さんに愛を求めているが、姉さんだって全員に愛は渡せないんだな」
 「ジーナローズ様だって愛を求めてもいいじゃないか。お前が最後の逃げ道なんだ」
そしてギルヴァイスは再び転移方陣の準備を始めた。
 「もう一度、行ってみる。姉さんもきっとそれを望んでいるはずだ」
その答えにギルヴァイスは満足そうに笑った。
 「それでこそレイジだ。今度こそ頼んだぜ」
 「ああ。応えてくれ、オレの心に。オレの愛に!」
 再び部屋が光に満ちた。
 「さて、復活パーティの準備をしよう。急げよ、きっとレイジはジーナローズ様を復活させるだろうからな」
ギルヴァイスはそう部下に命じた。

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 2013年 3月3日 荘野りず

最近のレイジナはレイジがヤンデレになってしまうのでノーマルレイジリハビリ。
こういう柔らかい感じのレイジナは久しぶりです。



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