悲恋系15のお題 レイジナ・アベレア中心で攻略

3、見つからない(アベレア)


どんなに呼んでも、辺りを見回してみても。
どうしても見つからない。


 彼の言葉は何よりもわたしを突き動かす。
アベル様、貴方の言葉だけがわたしにとってただ一つの真実。
 貴方に会うまではわたしは全てが偽りの中にいました。
 同情や励ましなど何にもならない。
アベル様のようにはっきり言ってくれる方が心地いい。
それに彼には迷いが一切ない。
 行動する時にはちゃんと覚悟を決めて責任を取る。
そんなところが好きなんです。


 朝の光も差さない幽葬の地下通路。
わたしはそこで目を覚ます。
 今日も嫌な夢を見た。
 教団の実験施設で苦しい目に遭っていたころの夢。
あの頃のわたしは希望という言葉に疑問を持っていた。
いつか誰かがこの地獄から連れ出してくれると言う夢を毎日見ていた。
そして現実でそれが叶わないと知ると人知れず涙を流したものだ。
 思えばあの頃のわたしは少し甘えていたのかもしれない。
 夢を見すぎていたのかもしれない。
でもそうしなければとうに心は折れていた。
アベル様と始めてあったあの頃からやっとわたしは自由の意味を知ったのだ。


カルヒン族の村で、わたしははじめて戦闘に参加した。
 守られてばかりは嫌だったから。
アベル様の役に立ちたいと思ったから。
でも結局わたしは足手まとい。
カイン達に負けてしまった。
パスカたちの動きは良かったから、敗因はわたしにある。
アベル様は当然のようにわたしを置いていってしまった。
わたしはカインに助けられた。
 抵抗しようにも体力が底をついていた。


わたしを捕らえた、というか軟禁したカインは意外な事を訊いてきた。
 「キミはどうしてアベルについて行くの?」
あまりにも当たり前な事で、わたしは最初何を言っているのか解からなかった。
そんなの決まっている。
 「アベル様がわたしの真実だからです」
わたしはきっぱりと言ってやった。
カインは驚いている。
 「わたしを教団から助け出してくれた、自由にしてくれたのはあの方です」
カインを睨みながらわたしは続ける。
 「従うのは当然です。……でもわたしはアベル様には不要なようですが」
 言っていて自嘲する。
そう、結局わたしは足手まといでしかない。
ただの食料と同じなのだ。
わたしは外に出てアベル様を探す。
でも。
どこを見ても。
 「見つからない」
アベル様が迎えにきてくれるかも、なんてわたしも甘い。
 身体も限界を迎えつつある。
 「来ればいいだろ、来たいんなら」
その声が聞こえたのは上空から。
これは、この声は。
 「アベル様!」
わたしの待ち望んでいたただ一人のアベル様がそう言ってくれた。
 意外とわたしも幸運なのかもしれない。
アベル様といるとそう思える。
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 2013年 3月31日 荘野りず

 これはあの時のアベレアでしょう!
という事でカルヒン族の村アベレア編でした。
アベルはツンデレだと思う。



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